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七月七日、晴れ



七夕の古語を知っているかい?
使い古された辞書、ぱらはらとそれを指先で捲りつつ視線を落とす。
男にしては繊細な指先、机に乗せた燈籠を光源に深まる闇を薄める。
生粋の黒ではなく、栗色の髪の毛は常ならば空の色を受けて光を
反射し、きらきらと輝くのに、今は宵闇に濃くなるばかりだ。
この季節は日が高い。
それなのに、夜の色を映し出す窓の外は、つまりそれだけ普段から
考えられないほど長い時間を一緒に居ることを物語っていた。

「知らない。何?」

「星逢いって言うんだよ。
 織姫星と彦星が天の川を越えて一年に一度きり巡り逢うだろう」

綺麗な言葉、と言うとその応えに満足したかのように余程綺麗に彼は
微笑んだ。
辞書を捲る手を止める、そしてその視線は此方を見据えるように固定
される。

「それともう一つ、意味があるんじゃないかと僕は思う」

「もう一つ?」

「そう。死んだ人を、星に喩えることが多いでしょう?
 だから、星逢いって星になってしまった恋人たちが幾度も巡り逢う、
 そういうことを示しているんじゃないかって」

平生は、驚くほど理知的理論的である彼はどちらかといえば厭世的な
感が否めないで居るのに時折不意にロマンチストなことを平気で
口にする。それが彼の本音なのか、此方に合わせようとした建前なのか
そんなことは如何でも良かった。
俺にとっては、如何でも良い。ただ、彼が言った言葉が大事なのだ。

「幾千幾万幾億の星の群れ、正しく天文学的な数、目に映らない小さな
 ものまで入れたら限が無いし、こうしている合間にも宇宙は膨張し
 拡がり続けているから際限ない。
 その星の中からたった一つを探して、惹かれて、運命的だと以外
 言いようがないでしょう。
 だから、星逢いは綺麗で特別だと誰もが感じるのかも知れない」

至極自然に、その手がこの髪を撫でる。

「君の髪は、天の川みたい。星をちりばめたようだね」

心臓が跳ね上がる。
天上に在る恋人たちは今宵巡り会えたのだろうか、仮令今生で
結ばれることがなかった恋人たちも時を越えて巡り会うのだろうか。
幾度も幾度も導かれるように、他の誰でもないこの人と、
時代が変わっても時が流れても別の国でも遠い遠い途方もないほどの
未来だとしても。

「見つけにいきます」

宣言染みた誓いをを、子どもの戯言だと笑うこともしないで、
先を越されたねと引き寄せられた。
生温い初夏の風を感受して、それでも傍にいたかった。















微パラレル。というのは、これはまあ彼らの前世のお話としても
面白いかなと思ったからです。
だから一寸レトロさを意識。






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