息を吐けば、瞬く間に白く浮かんで大氣に溶ける。 刺すような空気の冷たさに、思わず目を瞑った。 「センパイ、手貸して」 「良いよ」 差し出された小さな手に、迷うことなく手を委ねる。 子供独特の、僕よりは高い彼の体温に何だか謝りたかった、 だって僕の手は常に君より幾分か低くて、 熱を奪うことは容易く出来ても温めてやることは適わないから。 付き合い始めて、この温度と同様僕は君から 多くのものを得てはきたけれど、君に一体どれ位 多くのものを与えてこれたのだろうか。不図、思った。 ―駄目だ、冬は思考回路を駄目にする。 君が傍に居ることを何より信じなければならないはずなのに、 そんなことは判っているのに 例えばいつかの日に僕が思い出になってしまったとしても 君に何か引っかかるものくらいは遺せるのだろうか。 途方も無い、未来の話であることを願うけれど。 「冷たいよね、先輩の手」 「越前の手は温かいよね」 「普通ぢゃない?」 「ううん、温かいよ」 不釣合いな気がしてならない、君と繋ぐ手。 余裕なんて何処にも見当たらない、まるで落ちて<きそうな茜空と同調する。 不安なのは、それはきっと僕のほうが君が僕を想うより絶対君を想っているからだ。 そう考えて、肝心なところで君を信じきれていない自分に失望してみたりする。 想いの深さだとか、きっと計ってはいけないものだ。 君の、温かい小さな手を何より信じなくては。 指先が、じんわりと甘く痺れて強張っていた掌に感覚が呼び戻される。 絡みつく指先を、やわらかく捕らえて口元に運んで口付けた。 「・・・・・ナニ?」 「いや、ね。僕の手冷たいから、越前の手まで冷えてしまうでしょ?少しでも、温もらないかな、と」 吐息のかかる距離にある、彼の手が僅かに揺れる。 「イイ、別に冷たくないから」 「そんなわけ無いぢゃない。ほら、こんなに冷えている・・・ごめんね」 「・・センパイの手、スキだからイイっ・・」 「・・・・・・・・え」 思わず彼のほうへ顔を向けた僕とかちり、と目があうと 決まり悪そうに彼は早足で歩きはじめた。 けれど、まだ繋がれたままの手に驚く まるで、君と僕を繋ぐ手は具体性の無い約束みたいだ。 僕の少し先を俯いて歩く君の顔は見えない分、僕の期待を煽る。 若しかして、君は思った以上に身体も、ココロも未だ幼くて。 その感情を表現する術を知らないだけで 僕は、浅はかにも君のその幼さを拒絶と理解していただけなのか。 今だ発熱しつづける温かい手を、力をこめて握り締めた。 君の温かい手は、いつも いつだって、僕を冷たさから容易く掬い上げる手。 振り向いた君の顔は、夕焼け空の下で判断し難かったけれども。 脈打つ血流の速さが愛しくて、今度こそ、その赤い唇に 口付けをおとした。 |
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