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悪魔の証明




存在するということを証明するのは簡単なのだと彼は言う。
夕日が傾き始めた教室の中は西日が反射してまるでカレイドスコオプの
中に閉じ込められてしまったかのように眩しい。
眩しさに目を細めると、カツカツと独特のチョークの音が響いて
黒板に書かれていく右肩上がりのやや神経質に整った文字の羅列。

「せんせー、じゃあ存在しないというのを証明するほうが
 難しいんですかー?」

この馬鹿げた遊びに興じてそう言うとあちらさんも悪乗りして、
良いところに気付いたね越前君なんて笑う。
嗚呼、対外的な微笑さえも綺麗だなんてアンタどれだけ
神様に愛されて生まれてきたっていうの。

「そう。例えば幽霊がいるっていう証明は簡単だよ。
 幽霊を連れてきたら良いんだからね。でも居ないっていう証明は難しい。
 何故なら存在しないものを連れてこれる筈がない。
 証明できないのだから、存在しないと言いきれない」

「せんせー、それはこじつけじゃないっすか?」

「でも、一理あるでしょう?簡単に論破出来るかい?」

そう言われると言葉に詰まる。
先輩は意地悪なんだ、そんなの今に始まったことじゃない、俺はそれを
知っている。
此処、と制服の滑らかなやや光沢のある生地の上から心臓を彼が指差す。

「此処に心はあると言われる。俗説だけれど一般的に。
 それが無いと証明できる者なんていないだろう。
 誰かを想う時、心臓が早鐘を打つなんて経験は誰しもある筈だ。
 ねえ、君の心に僕の居場所はある?」

チャイムの音がいつもより遠くで聞こえる気がした。
無い、と言わせない周到な手回し。何て見事に鮮やかな逆説、思い出す、
これが悪魔の証明と呼ばれていることを。
例えば俺が否定したとして、無いものを見せるわけにはいかない。
この胸を裂いて、心臓を見せたってそんなもの何処にも存在しないと
言ったって、ないものを証明なんて出来ない。
ならばそれは、存在するかも知れない。
書きなぐる文字の羅列、黒板を跡形もなく消していくように投げかけた
波紋を消してくれたら、少し願ってそれが無駄だと知る。
白線の軌跡は粉になって待っていっそ幻想的なくらい、何となく目で追う。
今日の授業は此処まで、と言うと弧を描く唇がやけに楽しそうで、
行儀悪いと知りつつ椅子を傾けて体重を後ろに倒した。
先輩は意地悪なんだ、そんなの今に始まったことじゃない、
俺はそれを知っている。

知っていて、惹かれている。

在り得ない、心の在り処を嘯いても良いと思えるほどには。













悪魔の証明、を知ったときに感動して生まれた話。すげーこれ!!と
思ったのは良いんですが本人も混乱しているので、ちげーよこんな
論説じゃねえよと思っても黙って見逃してあげてください。






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Owner:momoya 2009 Not Take Free












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