霧雨の憂いを含んだような露を帯びて、花弁を濡らす雫をそのままに 僅かに綻ぶ深紅の薔薇の中庭に守られるみたいに彼は眠っていた。 不二がリョーマの居場所を尋ねて校内中を駆け巡って居たことなど、 まるで知らないといった様子で備え付けのベンチに横たわる。 だけど、呆れるというよりも、何故だか安堵した。 その規則正しい寝息に。 滑る陶器のような肌は曇り空の下で殊更白く、微かな頬の赤味さえ 無ければ本当に永久の眠りに彼が誘われたみたいでひやりとする。 人の気配を感じても、目覚める様子のない傍らに 不二も腰を下ろした。 若しも、彼が目覚めないなら、と思う。 若しも、彼が百年の眠りにつくというのならば百年待とう。 千年目覚めないというのならば、千年待とう。 永遠に目覚めないというのならば、その傍らで朽ち果てたい。 無垢なる薔薇の中、誰にも妨げられずに二人きり、 気が触れそうな時間を二人きり。 不図、幼い時分に読み聞かせられた物語を思いだす。 永い眠りの魔法を掛けられた可憐な人を、彼女の運命の人は 誰の目にも触れさせたくないなどと思わなかったのだろうか? そう思って、もしかしたらこの恋情こそが薔薇なのかも知れないと 彼は苦く微笑んだ。 この想いこそが、綺麗で棘を持ち、外界から愛しい人を遮る防壁、 拒む盾。 何ものからも永久に奪って閉じ込める、罪。 墨色のしなやかな髪の毛が、微かな風に掠め取られ靡いた。 そうっと、そうっとまるで開きかけた花弁を傷つけないよう 注意を払うみたいに細心の注意を心掛けて薄紅色の頬に触れた。 温もりに、その存在を確かめる。 「王子様のキスで、目覚めてよ」 桜貝の口唇に、接吻ける。 その柔らかさに人知れず眩暈した。 とにかく今は、あの黒曜石の瞳で、真っ直ぐ射抜くような視線で 見つめて欲しかった。 それだけだった。 それだけだった。 薔薇が綺麗な季節ですね。もう、うっとり。 薔薇は華やかであればあるほど好きな傾向にあります。 不二リョはシリアス書きやすいなー。久々不二リョ。 恋愛の狂気みたいなのがそこはかとなく表せたら良いのですが挫折。 |
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