「協力してくれる?」 真っ赤になって俯いた、小さい小さいとバカにされる俺よりも 少し小さい女子の台詞に俺は曖昧に頷いた。 それを肯定と受け取ったのか、彼女を取り囲む数名の友人が 良かったね!などと口々に呟いて騒ぎを更に助長する。 「ありがとう、越前君」 「・・・・・・・・・・・・・・ドウイタシマシテ?」 果たして、とりあえずでもきちんと笑えたのかどうか分からないケド。 「不二先輩、のアドレス知りたいんだって」 コート上の練習試合を見ながら、ベンチの横に腰掛けた彼に今しがた 試合を終えた俺は唐突に告げた。 案の定唐突すぎたのか、怪訝な顔をした先輩はそれでも頭の回転が 良いので、暫く無言になった後誰が?と尋ねてくる。 話が早いのも、この人の魅力だ。 「俺のクラスの女子」 「ふうん」 「おとなしいけど、可愛いほうじゃないの? 今度写真持ってこよっか」 「別に、必要ないから」 ふふ、と綺麗に微笑むと教えて良いよ、と事も無げに先輩は告げた。 「越前は、部活の連絡網で僕のアドレス知ってるでしょ? 良いよ、別に教えても」 やけにあっさりとした返事に、ちょっとだけ拍子抜けした。 こんなものなんだろうか。 俺の携帯電話は中学に入って、部活動で遅くなることも増えて、だから 心配性の母さんに持たされたもので生憎女子のアドレスなんて入って いないけれど先輩にとっては、それは何でもないことなのか。 胸にかかるモヤモヤした空気が、何となく心地悪い。 先輩は、誰かと付き合ったりするんだろうか。なんて思った。 不二先輩が人気があるのは、既知の事実だ。 同年代の男子が、女子のことで盛り上がっているときにそれでも ふわりと微笑む彼のことを俺は何だと思っていたのだろう。 変に、神格化したりだとか。 憧れたりだとか、していたのだろうか。 そう、と短く言ってスポーツドリンクを取りにいこうと腰を上げる。 ―――――その直前で、手首を掴まれた。 「越前って、バカだろう」 先輩は、苦笑する。 「な・・・・・・・にが」 「動揺しているの、バレバレだよ。 君は、僕に何を望んでいるの、それ。 僕が、彼女にアドレスを教えなかったら教えなかったで君は僕を 責めるくせに。教えるって言えば、今度は傷ついた顔するの やめてくれない?」 「傷ついて、なんか」 「そうなの?ならば、良いよね。 僕が誰と付き合っても、誰に想いを馳せても、誰とセックスしても」 完全に厭味で言われている、と分かって顔が紅潮した。 彼の口から、直接的な言葉が出るなんて思っていなかった。とショックを 受けて、同時に俺は先輩を何だと思っていたんだろうと無責任さに 自己嫌悪に陥る。 人に恋路を指図されるなんて、きっと気分のいいものじゃないだろうに。 俺が傷ついた、なんて言いつつも俺が傷つけたんだ。 「越前は、バカだ」 繰り返される言葉に反論も出来なくて、唇をかみ締める。 と、その白んだ唇を彼の指先が辿った。 「僕の、片想いで終わったならば良かったのにね」 ―――――そんな顔、しないでよ? 輪郭を辿って、鎖骨を這う指先に身体が、心臓が、赤く染まる。 きっとあの瞬間に俺の身体も心臓も先輩に食べられてしまったのだ。 ごろり、と寝返りを打ったベッドは微かに彼の匂い。 なんて乙女っぽいことを思ってみたり。 頭が重い、それを言えば身体が重いし、到底起き上がる気になんて なれやしない。目に溜まった涙をぐい、と拭って横で既に着替えを済ませて 携帯電話を弄っている人影に目をやる。 「何、してんの?」 「ん、お断りのメールかな」 「何で」 「――――――そりゃあ」 こちらの思惑に気がついたのか、パタン、と折りたたみ式のそれを閉じると 器用に片手で抱き寄せてそのまま済し崩しに再びシーツの海に沈む。 「愛しい人と直ぐ傍で繋がれるのに?」 「それって」 俺のこと? 聞くより前に、言葉は唇に塞がれた。 ああ、ゴメン。 ゴメンね、許してくれなくても良いけど。 協力は出来ないみたい。 俺もこの人が、欲しいんだもん。 腹黒い?というか、天然小悪魔のリョーマさんです。 本当は先輩がもっとSになる予定だったんだけれど、今回は リョーマさんに軍杯があがりました。あれれ? |
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