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Close to you




無鉄砲で向う見ず、己の行動を省みない。
危なかしい、ヤツ。



「今日、あのチビは?」

練習試合に、らしくなく姿を見せずベンチに座りきりな
ヤツを指差して試合後スポーツドリンクを飲んでいる最中の
向日に声を掛ける。
一寸待てと云わんばかりに手を翳した向日はごくごくとそれを
飲干した後大きく一息つき

「知らない、青学の奴にでも聞けよ。オーイ、菊丸!」

どうやら親しくなったらしい奴を呼びつけた。

「何何?」

「跡部が、何か聞きたいことがあるってよ」

「・・・てめえ」

態と此方に話振りやがったな。
ちっと舌打ちして、仕方なく俺は菊丸に話を切り出す。
ったく、何でこの俺があんなチビのこと気にしてんだ。

「おまえらのトコの一年レギュラー今日は試合出ないわけ?」

俺の言葉を聞いて、些か眉を顰めた奴は言い出し難そうに
表情を変えた。何かあったのか、と直感的に気付く。
仮にもライバル校には言い難いって訳か。成る程成る程。
俺はその場で人払いをして何だよ、内緒話かよと不平を言う
向日をしっしっと追いやり菊丸とベンチに腰掛けた。
真夏のグラウンドのベンチは、手で触れると火傷しそうに
暑くてこれぢゃ休む事も難しい。
尚も照りつける太陽に嫌気が差しつつもスポーツタオルで汗を
拭って俺は先を促す。

嗚呼、もう何でこんな面倒臭い事。

此処までして訊けないのが癪だからだ、そうに違いない。
俺の不機嫌を見てとってか、それとも人払いが利いたのか
割とすんなり奴は口を割った。
人選が正しかったのも一理ある。
これが、堅物の手塚やあの不二とかならば絶対に口を割ったり
しないだろう。それでも、

「云っとくけど、他に洩らすなよ」

お決まりの台詞を吐いただけ菊丸も深刻だったに違いない。


「おチビちゃん、今怪我してんの。足首捻挫と、打撲が主。
 折れちゃいないし、医者もあと1週間もしたら平気だって
 いうけど念のため試合には出してないんだよ」

「物騒だな、何でまた」

「喧嘩」

男らしいよな、と云いつつも溜息をつく辺り
こいつも弱っているらしい。
何でも、ありがちな話で。
他校のガラの悪い奴らに囲まれていた何処かの女を助けようと
止めに入ってあの様だと。
あの、小さな身体で。
幾ら運動能力が優れていたって、体格差も、これまた多勢に無勢って
いう言葉だってあるんだぜ。オイ。
偶偶通りかかったオレと桃城が加勢して何とか
その場は逃げおおせたものの、と菊丸がぼやく。
そう言えば、初めて自分と顔を合わせた時も怯むことなく
挑発をしてきた越前の顔を思い出す。
つまり、そういうヤツなんだ。

「困ったものでさー、幾ら云っても厄介ごとに首つっこむんだよね
 チビちゃんって。オマケに、本人気にしていないといっても、
 あの外観だろ?ヒヤヒヤもの」

ほら、何時悪いお兄さんに誘拐されてしまうかってねと茶化す
菊丸をそのままに俺はベンチから立ち上がり、一点を目指した。

「オイ、跡部!」

掛る声に、しかし気付かない振りで歩く。
足を止めると、目の前に座る越前を見下ろした。

詰まらなそうにコートを見ていたヤツは、俺の影に気付くと
不審そうな表情を隠そうともせず

「何か用?」

たった一言言い放つ。
無言の、否定。
用が無いなら、去れと言わんばかりにまた越前は
目線をコートに戻した。
この俺様を無視なんて芸当。
中々やるぢゃねえか、この野郎。
不意に足元に目を留めると、まだ生々しい包帯が
存在感をアピールしてた。次いで、目に入る華奢な
脚の至る所に色を付ける痣の数々。
無茶やってんな、なんて思って何となく目を細めた。

「何か、用デスカ?」

愈々立ち退こうとしない俺に態とらしく溜息を一つ零して
くしゃり、とその黒髪をかきあげる。
そして、あの眸で見上げる。
まるで、野生の獣だな。
傷ついた、獣と同様だ。
警戒心丸出しで、酷く危くて、脆くて。
それでいて、加虐心を煽られる。

「用が無いなら・・・」

「用なら、あるぜ」

言って、自分たちがどれほど注目を浴びているかに
今更ながら気付いた。
チッと、舌打ちをする。
覗き見する余裕があるのなら、練習の一つや二つ
やればいいだろ、暇人どもめ。
ジロリ、と辺りを見渡すと幾らかの人間は慌てて目線を
逸らした。バアカ、なら最初っから見るなっつーの。
それでも、俺たちから視線を外さないのは大体青学の
メンバーか、やっぱりな。
予想通りすぎて、可笑しいくらいだ。
そんなにコイツが心配か?

「一寸、話がしたいだけだ。オイ、こいつ借りていくぜ?」

「な・・・」

俺は話なんてナイ、と言って抵抗する越前を無視。
オイ、跡部と背後に掛る手塚やらの声もこれまた無視。

「別に取って喰やあしねーよ。それとも何だ?
 他校生と話するだけでも青学ぢゃあ禁止ってか」

おっかねえなぁ、と態と声を大きくしていうと
あとは流石に誰の制止も掛らなかった。







「話って」

憮然として言う越前の反応があまりにも予想通りすぎて
笑い出したいのを何とか堪えた。
一丁前に、睨むことだけは止めないわけか。
だから、てめえは余計なことに巻き込まれるんだって。

「オマエ、怪我したんだって」

「アンタに関係ないだろ、直ぐ治るし・・・」

テニスにも支障ない、とバツが悪そうに言った。
機嫌の悪いわけは、其処か。
越前にしても、予想外のアクシデントだったってわけか。
怪我をするつもりは無かった、と。

「バアカ、相手見て喧嘩は売れよ」

「そんな卑怯な真似、誰が!しかも俺が売ったんぢゃナイし」

「己の技量を測ることの、何処が卑怯なんだ」

「弱い相手の喧嘩だけを買え、と?卑怯ぢゃん」

尚も此方を熟視したまま、言葉を紡ぐ。
そうでは無いんだ、と思い慎重に言葉を選ぶことに
俺は意識を置いた。そうでは無いんだ。

「自分の身は、きちんと護れってことだ」

「・・・・・・」

今度は誤解もされず伝わったらしく、その一言で先程までの
気丈が嘘のように越前は下を向く。
思い当たる節は、多分幾らだって在る筈だと続けた。

「アンタに、言われたくないんだけど」

「俺様は、それに見合うだけの実力を持ってるんだよ」

少なくとも、人の手は借りずに片をつけられるくらいには
喧嘩だって何だって腕の立つ自覚はあるからな。

「少しは、自分の身を護ることを考えたらどうだ」

お前の場合、それでなくとも言動やら容姿やら目立つんだ。
自覚しろって。
言いながらも、此方を再び見遣るその鋭い目線に一つ
溜息を吐く。

「だから、そーいう目すんな」

「五月蝿い・・・だって、ムカつく」

嫌われたもんだな、と笑った。

「ムカつく?ああ?俺様が正しいことを言ってるからか」

「――――ホント、アンタムカツくね・・・」

人に喧嘩売る天才ぢゃない?
皮肉たっぷりに笑む越前に、お互い様だろうと言った。

「だって、保身考えていたら人を助けたり出来ないし」

「お前、一寸は頭使えよ」

コン、と額を小突くと唇を尖らして年相応の子供めいた
表情を浮かべた。
そういうギャップが、だから良くも悪くも人目を引くんだと
言いかけて止める。

「そんときゃ、周りに助けを求めろよ」

恥かしいことでも何でも無いだろ、と。
怪我して、周りを心配させたり困らせるよりは
マシぢゃねえ?と。
言ったら、脚の包帯を見つめて

「やっぱり、アンタムカツく」

苦笑した。

だって、ホラ。
見ているほうが、怖いくらいなんだよ。
お前のその、向う見ずで危い行動。
見ているほうが、痛いんだよ。
お前のその、華奢な脚に幾重にも巻かれた包帯だとか。

畜生、頼むから。
その身体を傷つけないでくれなんて絶対に言えないけれど。



未だ真新しい携帯に、見慣れた自分の番号を打ち込む。
出来るだけ、直ぐに目につくように。
今度から、喧嘩する前に俺を呼べよ。



「スーパーマンみたいに、駆けつけてくれる?」



ああ、勿論だろと笑って手を繋いだ。





















何か、仲良くなってる(笑)男前な王子と跡部様を書きたくて
仕方の無い今日この頃です。しかし、清いね!交換日記とか
始めそうな勢いだよね!ある意味ギャグだ・・・・。
跡部様の一人称なんて無理な課題に取り組んだ私が馬鹿でした。
俺様な彼の思考なんて一般市民(腐女子)の想像出来るものでは
無かったわ★失敗を乗り越えて人は大きくなれると信じてみます。








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