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初恋クレイジー









膝丈のスコートからすらりと伸びた白い足。
青を基調とした爽やかなユニフォームがよく似合っている。

「俺、時々お前が怖くなる・・・・・・・・・・」

「誉め言葉でしょ、ソレ」

ふふふ、と零す微笑は華やかでその正体を知らない
憐れな男子生徒(きっと一・二年生だ)は廊下で
すれ違うたび振り返って此方を見ているし、その正体を知る
同学年の女子生徒からは黄色い悲鳴が飛び交う。

「大好評★」

ご丁寧に手まで振って声援に応える友人は、確かに類稀な
美形だしその容貌は確かに男性的というよりも寧ろ女性的な
柔らかさを兼ね備えている。男にしては白い肌、色素の薄い
髪の毛に、長い睫毛。・・・・・中身さえ知らなければ、
大方の人間はその外見に騙されるんだと菊丸は思う。
完璧な外観の彼に、それに伴う聖人君子な完璧な中身が
伴わなかったのは、それこそ神様がそう何物も一人の人間に
与えないということだろうか?

―――――青春学園では、毎年恒例新入生歓迎の
パフォーマンスがある。
パフォーマンスというほど大それたものではないのだが、
要するに1・2時間与えられて校内を各部活の人間が徘徊し、
一年生を勧誘するといったものだ。
因みに、こういうパフォーマンスは派手なほうが
見るものの心を捉え、インパクトも与えられる。
だから、殆ど悪乗りの勢いで部員誰かの女装(スコート)と
いう案が男子テニス部では通った。
女装というだけで、これは結構目立つ。
しかも、スコート姿となればあんまりいい意味でなくても
インパクトに残ることだけはほぼ確定したようなものだ。
だが、生憎というか何というか籤で決められたその切符を
手にしたのは不二周助、その人だった。

「似合ってるでしょ?」

数分後、すっかりスコートを着こなした彼を笑える者は
誰も居なかった。
それは、単純に不二が怖かったこともあるし、もう一つ。
とんでもなく、綺麗なお姉さんにしか見えない彼が
愛らしい笑みを浮かべて居たからだ。
そういや、不二の姉さんって超美人だったと菊丸は不図思う。
不二だって、どちらかといえば女顔に属する人間でしかも
とてつもない美形、となれば似合わない方が可笑しいのだ。
意図する方向ではないとはいえ、彼の姿はやたらと人目を
惹いた。女子だって、あの綺麗な人誰?と囁きあっているし
男子生徒に至っては目が合うと顔を真っ赤に染めてしまう子
だって居る。気の毒に、と思いながらも中々乗り気の友人と
校内を練り歩きそこそこの成果を上げて勧誘をしていた。

「しかし、女の子って大変だね。こんなに人の視線に
 耐えなきゃいけないなんて。僕だったら、キれそうだもの」

何気に恐ろしいことをさらっと言う彼に、だけどもう慣れっこな
菊丸はお前が単に目立つんだよーと割りと気軽な返事を返した。

「さっきもさ、英二を待っていたら何か一年生っぽい男の子に
 呼び止められて。一応勧誘したら、じゃテニス部に入ったら
 付き合ってくれますか〜?とかって言われたし」

「・・・で、如何した」

「やだな。きっちりと誠心誠意を込めてお断りしたよ★」

何となく、その憐れな下級生の末路が見えて引き攣った
笑みを浮かべた。そんな会話を交わしつつも、
作ったチラシを大方配り終えてそろそろ時間も終わるし
教室に戻るかと提案した矢先である。
不意に、二人の前に小さな人影が立ち塞がった。

「テニス部の、人?」

ゆっくりと呟かれたやや甘い声に、幾分か呆然としたのは
その人影に見覚えがあったからではない。
見覚えなんかない。
一度目にしたら、忘れられないような容貌をした
子どもだった。

(す・・・っげーーーー!)

超可愛い!と思わず叫びそうになった自分を菊丸は
辛うじて止めた。さらさらの黒髪には天使の輪。
ややきつめのアーモンドアイには、羽音がしそうなほど
豊かで長い睫毛が白い肌に影を落としている。
学生服で如何にか男子生徒であることが分かるが
そうでなければ、絶対に分からない。
すっと通った鼻梁に、形の良い唇がねえ?ともう再び問う。

「あ・・・!そうそう、俺たちテニス部の人。
 何、君入部希望?」

はい、とチラシを渡しつつ返事をするとそうだよ、と
戸惑うことなく彼は真っ直ぐに言った。

「強い?」

「んー、まあ強いよ。俺よか、不二のが強いけどな。
 なあ、不二」

「やだな。謙遜しすぎだよ」

ふうんとそのやり取りを見た少年は、ツカツカと更に
二人に距離を縮める。

「アンタ、不二さん、強いの?」

「まあ、それなりに」

「・・・・・成程?」

口の端をあげて、小さく笑みを零す。
それから、彼は決めた!と一言言い放った。

「俺と試合してよ、先輩。俺が勝ったら、俺と付き合って」


















ぎゃー!と叫びたくなったのは菊丸だ。
少しだけ冷静になって、そういや不二が今女の出で立ちを
していることに気付いて再びぎゃーとなる。
この子、このやたらに小生意気そうな美人さんは、
気付いていないのだ。
否、気付くはずもない。
目の前に立つこれまた極稀にしか見かけない
美貌の持ち主が自分と同じ性別だなんて。
気付くほうが可笑しい。
他人事といえば、そうだがバクバクする心臓を押さえて
ゆっくり、ゆっくりと友人の方を省みる。
不二は流石に何か考えているようで、口元にその手を
当てて目を細めた。
そうだ。
何も此処で間違いを正してやればそれで済む話なのだ。
焦ることじゃない。
(断れ!断れ不二!)
しかし、その願いも通じないのか少年を値踏みするみたいに
じっと眺めた後不二は一寸良いかな?と彼に断りを入れた。

「何っすか?OK?」

「いや・・・・それは君しだいかなー。うん、一寸御免ね?」

「ぇ?」

言うが早いや否や、不二は相変わらずの笑みを浮かべて
ぎゅっと、それこそぎゅっとしか言いようがないくらい
ぎゅっと少年を抱きしめた。ハグだ。
流石にこれには吃驚したのか、ぱちぱちと眸を瞬かす
子どもに名前は?と耳朶に触れる距離で囁いてみせる。
くすぐったいのか一瞬身じろいで、リョーマ、と小さく
彼は応えた。
不二がその瞬間、大層綺麗に―――――だけれど、
禍々しく笑んだのを旧知の親友が見逃すはずはなかった。

「リョーマ君、じゃあ、こうしよう。一緒に試合して、
 此方が負けたら君とお付き合いする。
 でも、此方が勝てたらそうだね。
 何か一つ何でもいうこと聞いてくれる?」

ね?と小首を傾げて必殺スマイル★を浮かべたら
断れる人間なんて居ないのを不二は経験上知っていた。
案の定、断れるはずもなくリョーマと名乗った少年は
少し顔を赤くして、こくん、と素直に頷いた。が。

「待てえええええええっ!!」

すんでのところで、菊丸は声を張り上げた。
その声に驚いて、何事かと周囲の人間が此方を見たが
そんなの関係ない。冗談じゃない。
不二のあの微笑みは、奴が悪巧みをしているときに
効果的に発せられるものだ。
長年の付き合いをしていると、色んなことが見えてくる。
例えば、彼の好みもそうだ。
不二は綺麗な男だったから、女性関係は派手ではないものの、
決して地味じゃなかった。菊丸が知っているだけでも、
片手で事足りない位の女子とは噂になっていたりするから
実際はもっと多いのかも知れない。
そのこと如くが、所謂可愛い子、だ。
どちらかといえば、今流行の小悪魔系の可愛い子、である。
つまるところ、目の前に居る「リョーマ」は。
不二の好みどんぴしゃだ。
そんな好みどんぴしゃの下級生を仮令彼が男子生徒である
からといって不二が見逃す・・・気がしない。
しかも、何でもいうことを聞いてくれる?というおねだり。
―――――何を聞かせられるか分かったものじゃない。
見るところ、テニスの腕に自信があるらしいこの子はきっと
同じ部に入ってくるだろう。そんな可愛い後輩(候補)を態々
友人の毒牙にかけることない。

「・・・・・・・・・・・何すか?」

「あのっ、ホラ不二は止めといたほうがいいんじゃない?
 かなーなんて・・・・・・あは、はは」

・・・・・・・・この時ほど自分の語彙力の無さを
菊丸が怨んだことがあっただろうか・・・?
案の定彼の親切さは伝わらなかったらしく(当たり前といえば
当たり前の話だ)リョーマは如何して?と聞いてくる。

「二人、恋人なの?」

「ぎゃーーーー!!」

―――――違う。それだけは、断固として断りたい。
世界が明日引っくり返ってもそれだけは有り得ない。
無人島で、不二と二人遭難してもそれだけは有り得ないと
彼は思う。寧ろ無人島で不二となんか遭難したら、
何食わぬ顔で簡単に見放されてしまう予感がひしひしとする。
不二にしても、それは同意見らしく笑みが引き攣っている。

「違うの?」

「違うよ」

やんわり否定する不二に賛同して、ぶんぶんと首を縦に振る。

「じゃあ、如何して?」

「ほ・・・ほら、えっと・・・・」

『言ったら、只じゃおかないからね』

目は口ほどに物を言うという。不二の目が確かに
そう言っていて菊丸はじっとりと嫌な汗を掻いた。
言えない。
言えるもんか。
傍にいるからこそ、不二の機嫌を損ねるということが
どれ程怖いか彼は身をもって知っている。
結局、黙りこくってしまった彼を尻目に溜息つくと
リョーマは改めて不二を見た。

「テニス上手くって、しかもこんな綺麗な先輩なんて
他に絶対居ないじゃん。大和撫子っていうの?
俺、憧れてたんだ」

「そうなの?」

「ハグは吃驚したけど、女の人が積極的なのも好きっスよ?
 先輩、じゃあ約束ね!指きり」

ピンと立てられた小指を、可愛いなと思いながら自分のと
絡める。満足そうにリョーマは笑うと颯爽と駆けて行った。
後に残された、二人。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「リョーマ君かぁ。凄い可愛いというか、綺麗な子だったね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「後輩になるのか。楽しみだね、英二」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・不二・・・」

「何?」

「――――――――――何する気だよ」

「・・・・またスコート穿いてっていうのも、何か倒錯的で
 良いかな〜。あ、でもホラ彼に穿かせるのもアリじゃない?
 絶対似合うよー。可愛いもん、あの子!」

「だから・・・・・」

「さっき、抱きしめたときもさ、耳元で囁くと
 ビクンってしたし可愛いよね。
 抱きしめた感触も抜群。あの小生意気さも、なんていうか。
 啼かせたくなるよね?」

ね?と言われても如何応えたら良いのか誰か教えてくれ。
どうも矢張り完璧に気に入られたらしい下級生の
今後を思うと同情せずに居られず、目頭がほんのり
熱くなってきた。

「強く、強く育てよおチビちゃんっ・・・!!」

僕が男だって知ったら吃驚しちゃうかな〜?とか
暢気に言って足取りも軽やかな友人と並んで何だか
大層疲れた面持ちで彼は帰路に着いた。









それから、数日後入部試験の後非公式でこっそりと
学校外のコートを使い不二とリョーマの試合は行われた。
自分が入った部活のものと
同じ男性物のテニスウェアを着ていた不二にやっぱり
子どもは驚愕して、それが幾らかはショックだったのか
如何なのか見事に敗れた。
審判を務めた菊丸の方を、恨みがましい目で
見てきたがこれでも俺は努力したほうだと彼は思う。

「約束、覚えている?」

口元に弧を描く、青年は相変わらずとても綺麗で、
とても可憐で愛らしいけれど何となく。
本当に、何となくだが嫌な予感(悪寒)を感じてちょっぴり
引き腰になったリョーマを制して、覚えてる?
ともう再び彼の唇は紡いだ。
腰に添えられる手が、背中に潜り込んできて
自分の野生の勘の正しさを思い知らされると共に
浅はかさも思い知らされる。

「英二〜!明日、朝練僕と越前遅れるから〜!」

「やーーーーーっ!何決めてんの!何勝手に決めてんの!!
 嘘、嘘だっ!嘘つき!何女装なんかしやがってんのさっ」

「あ?女装の方が好み?そういうプレイが良い?」

「プレイって何だ!プレイって!」

「僕としては、越前に着て欲しいなぁ。
 じゃあ、着替えようか」

「きゃーーーー!!」

じゃあね★と手を振られて、ああ、うん。と手を振り返す。
というか、それしか出来ない。あの華奢な体躯に見合わず
何処からそんな力が出るのかずるずるとリョーマを
引きずって歩いていく不二を見送って明日はきっとおチビは
放課後も練習無理だろうなーなんて考えた。
















不二先輩女装話第二段。凄い書いていて楽しかったよ(笑)
攻めの女装はホント萌える。受けの女装も好きだけれど、女顔の
攻めの女装も倒錯的で良くないですか?ほら、何かと脱ぎやす(黙れ)
不二先輩はきっとスコートを調達していて、リョマさんとあれとか
これとかしちゃうんですよ。どっちが着ても私は萌える。
要は不二先輩の女装をそれと知らず一目ぼれしちゃうリョマさんが
書きたかっただけなんですがね。隠しに置いても面白そうな設定だと
私的には思えたのですが苦手な人のが多そうだ(笑)



















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