目を覆う、一面の春に。 目を覆う、もう狂いそう。 気が、触れてしまいそう。 「観に来て正解だったね。 明日の雨では、きっと散ってしまうから。 今日もこんな曇り空で、小雨がちらつく空模様だから花見客も 見物人も少ないし。普段とて、穴場だから あんまり人は来ないけれど」 「圧巻、の一言ッすね・・・」 「難しい言葉、知ってるね」 こんなに沢山の桜を見るのは初めてだとリョーマが言った。 アメリカに居た頃も見たことはあるけれど、 矢張り本場で見るほうが幾らだって綺麗だ。 咲誇る花は一つ一つが淡い色にも負けじと輪郭を 保っているのに重なり合うと全てで一つの生物みたいだ。 見上げると今日は薄曇りの空は灰色と言うより寧ろ白色に近く、 桜色と言うより寧ろ白色に近い桜とは 一寸融けあってしまいそうに見えた。 「桜って、好きかい?」 「うん。嫌いでないっす。ケド、散ると汚いよね。 アレは嫌かな」 「そうだね。地面に散ると、枯れてしまうから」 「あと、折角綺麗なのに割と直ぐに散ってしまうのは、嫌い」 ずっと、もっと、見て居たいのに。 そう不満を洩らすリョーマに小さく笑うと、 不二は春風に誘われるまま 靡く彼のしなやかな黒髪をすくった。 「刹那だから、綺麗なものもあるよ。 永遠でないから皆愛でるんだよ」 「・・・・・・・・・恋みたい」 「恋みたいだね」 ねえ、先輩。とリョーマが言った。 何時もの彼に酷く相応しくない声で、何かを懼れているかのような 何かに怯えているかのような、 ともすれば風の音に隠されそうな声で そっと桜貝の唇を紡いだ。 「オレ、ずっと、言えなかったことがあった」 言って眉を微かに顰めるリョーマに変わらず不二は微笑んだ。 栗色の柔らかな猫毛がふわりと小鳥の羽みたいに流れる。 出来るだけ、綺麗に笑って居たいと不二は言った。 出来るだけ、君の前では虚勢を張って居たいんだよ。 「奇遇だね、僕も君にずっと。 ずうっと、言えなかった言葉がある」 言葉にすれば、きっと簡単で。 けれど、それは口に出すと酷く重たい。 それで潰されるくらいなら、それで失うくらいならと 慎重に逃げていた感情がある。 彼は勘の鋭い方で、自分だって勘は良いと思って居た。 だから、ずっとずっと前に気付いていたし 気付かれて居たのだろう。 けれど、それは総てを揺さぶりかねない。 花曇りだね、と唐突に空を見上げてリョーマが言った。 ゆっくりと、ゆっくりと目を臥せて不二はそうだね、と矢張り 口元を笑みの形に歪ませる。 「君は、逃げるつもりなんだね。矢張り」 御免ね、と言われて構わないよと息を吐いた。 「刹那だから、綺麗なものもあるかも知れない。 一瞬だから、永遠になるかも知れないから、御免ね。 ・・・・・・・・・オレは、未だ」 「嗚呼、桜が綺麗。ねえ、見て御覧」 霞む桜は、目を凝らせば薄く色付いていて。 決して純白ではないけれど、鮮やかな馨る色に二人して 思わず目を細めた。 色付き、花が散るその日々をどうか恋と呼べる日が来るのならば。 「恋みたい」 「恋みたいだね」 目を覆う、一面の春に。 目を覆う、もう狂いそう。 気が、触れてしまいそう。 スランプかな、と思いつつ書いて見ました。生温い不二リョです。 実際人を好きになるのも、その思いを告げるのも相当な覚悟が居ると 思うのは私が古い思考の人間だから?(笑) 王子はまだまだお子様なので、そこまでの覚悟は出来ていないのですね。 ちゃんと両思いですよ、この二人(苦笑)お花見いいよね! |
| SEO | [PR] 花 冷え対策 再就職支援 わけあり商品 | 無料レンタルサーバー ブログ SEO | |