「甘いモノ?嫌いぢゃないよ?」 君が、くれるものならば何だってイイよと言いそうになったけれど 慌てて口を閉ざした。 昼休み、ちょこんと3年6組の教室に顔を出したリョーマは 近くにいた女子生徒に声を掛けられ、少し戸惑いながらも 不二を呼んでもらった。 3年の教室の雰囲気は自分のクラスのそれと何処か違って 何だか所在無い感じがする。 他学年からの訪問者に、注目が集まるのも少し気恥ずかしい。 自分の姿を認めるなり、至極嬉しそうに駆け寄る不二に リョーマは頬を染めた。 ここぢゃあ、何だから移動しませんかとリョーマが言えば すんなりと受け容れられる。 「今日は天気がいいね」 「ですね」 「ぢゃあ、屋上に行こうか?」 不二の提案に、リョーマはそうですね。と素っ気無く返した。 漸く立ち去る事が出来るとなって解れる息苦しさに 肩を下ろすと、教室の中から 「不二、後輩を襲うなよ」 「リョーマ君、頑張ってねー」 野次が飛ぶ。 ――――これだから、此処に来るのイヤなんだ。 「ご期待に添うように頑張るからねー☆」 笑う不二に、女子の黄色い歓声が上がる。 どうも、教室で自分たちの関係をカミングアウトしたらしい ツワモノの行動に初めリョーマは抵抗や反抗を試みたが そんなコトをすればするほど、照れ隠しだのなんだの 彼の教室の反応は過熱していくばかりだ。 もはや、とうに諦めた様子で行きましょ・・・と扉から 不二を連れ出した。 「で?どうしたの、越前」 「先輩、今日誕生日だからっ・・・大したものぢゃぁなんですけど」 コレ、といってリョーマは手に持っていたスポーツバッグの中から リボンの付いた白い箱を取り出す。 独特の形をしたソレは見覚えがある。 「ケーキ、買ってきたから。持って帰って?」 他に、思いつかなかったんだもん。と照れくさそうに言った。 ケーキだけでも、一人で少年が買うには結構な勇気が 要ったことだろう、と不二は思った。 彼も幾度か姉に連れられて、ケーキ屋に行ったことがあるものの 自分一人で行ったことは無い。 場の雰囲気が何となく、女性を対象に作られている気がする 売り場は一寸行きづらいものがある。 それを、わざわざ買いに行ってくれたらしいリョーマの様子を思えば 胸の奥で、泡が弾けとぶような感覚に捕らわれる。 少しの間、その箱を見つめたまま黙っている不二を見て リョーマは、若しかしたら不二が甘いモノが苦手なのかも 知れないと不安になった。 「先輩、甘いモノ嫌いぢゃあ無いよね?」 「うん、好きだよ?」 その言葉にホッと息を吐く。 「良かった、嫌いだったら如何しようかと思った」 「君が、くれるものならば何でも食べる自信はあるけれど」 ね?と言っていつものアルカイックスマイルを浮かべる不二から 急いでリョーマは目線を逸らした。 耳朶が、熱い。 顔も、熱い。 見られたら、イヤだなと思ってなるべく未だ冷たい空気に体温が 同調する事を願った。 此処は、屋上なのに。学校なのに。 下手をすればとんでもない事を口走りそうになる。 二人きりの時間と錯覚してしまう。 慌てて、会話を続ける。 「此処のケーキ美味しいんだって!」 「へえ、越前はもう食べた?」 「ううん、その種類は食べた事ないんだけど。 其処の店の他のケーキは美味しかったよ?」 「ぢゃあ、一緒に食べよっか?」 「え・・・?」 どういう意味、と問う前に不二が起した行動でリョーマは 彼の意図を理解する。 繊細な様を見せる、長い指先で器用に箱を閉じていた シイルを剥がして見せた。 「あ、ホントだ!美味しそう」 「せ、センパイ?」 戸惑うリョーマの黒髪を撫でて 「だって、一人で食べるよりも二人で食べた方が 美味しいに決まっているよ」 まるで極々当たり前の事を諭すかのように言う。 そりゃ、そうなんだけど・・・とそれでもまだ腑に落ちないらしい リョーマに不二は箱の中から鮮やかな色彩を放つケーキを出し、 上にデコレーションしてある苺を一粒摘んだ。 生クリィムの付着したそれを、そのままリョーマの口元に運んでやる。 つられて、口を開いたリョーマはパクンと不二の指先から苺を 口に入れた。 「美味しい?」 「・・・っす」 「ホントだ、美味しいね」 パイ生地で出来ているらしいそれは、スポンヂのケーキよりも 容易く手で割ることが適う。 今度は、トッピングの苺なんかでなく本体を少し千切り取り 不二は同じ様にリョーマの口元へ運んだ。 リョーマが、手で受け取っても彼が食べ終わるまで離そうとしない。 普段は、絶対しない事だが誕生日だし、元々センパイにあげる ケーキだったし、と思いリョーマも箱に残っているケーキを取り出し 割って、不二の口元にそれを持っていった。 流石に、少し吃驚した様子を見せた不二に 何処となく優越感をおぼえる。 有り難う、とふんわりお菓子みたいに笑って不二も リョーマの手からケーキを口にした。 ペロリ、と時折触れるざらついた舌の感触に思わず持っている ケーキを落しそうになる。 リョーマが、この人態とやっているんぢゃあないか、と疑って 彼の方を見るとかちり、と目が合って疑いは確信に変った。 「悪趣味・・・」 「光栄だなぁ」 言いつつも、唇を動かし咀嚼していく。 リョーマが絶賛していたケーキは確かに美味しくて、 甘いモノだけ食べ続ければ胸やけするかな、と一寸心配していた 不二だが二人で食べきるまでにそう時間は費やさなかった。 最後の一口を食べきる不二を、リョーマが満足そうに見守る。 「どう?イケル?」 「うん、大変結構なお味でした。有り難う、御馳走様」 手を合わせると、少しはにかんだ笑みをリョーマが浮かべた。 そろそろ、昼休みも終わりだなと 校舎の時計の文字盤を見て確認する。 「行こうか、掃除の時間に遅れてもいけないしね?」 不二は、そういってリョーマの手渡してくれたケーキの箱を 綺麗に折りたたんだ。そうして、もとあった外袋に包み持ち帰る。 手を、地に座り込んでいるリョーマのほうへ伸ばして もう一度、行こうかと呟けばその手は彼の手より一回り小さな 温かい感触を掴む事が出来た。 忘れ物が無い事を確認して、立ち去ろうとした最中 リョーマが不意に立ち止まる。 進まなくなった繋がる手の感覚に、不二は後ろを振り返った。 ちょうど、天上に昇りつめた太陽光が眸に映り、 遮られたかのように彼からリョーマの表情は見えない。 「実は、もう一つプレゼントがあるんだけれど」 反射する光線に目を細めて、何?とゆっくり訊ねた。 リョーマの表情は、依然として良く見えないままだ。 「綺麗に飾っても無いけど、貰ってくれる?」 その後、いきなり人の重みが身体に持たれかかって来て 言葉の真意を理解した途端、どんな顔でリョーマが 言ったのだろう、と不二は思わず想像を巡らせた。 腕の中で、リョーマが不二を見上げる。 「返品は、利かないんだからね?生ものだし」 「何一つ、残さず食べるよ」 おかわりしても、イイ?と黒曜石色の柔らかな髪の毛を かきあげて耳元で囁いてみると 善処シマス、と小さな形のいい桃紅色の唇が 弧をえがく。 春の気配を含んだ冷たい風に乗って、鼻腔を擽るシャンプーの 馨りに、どちらからとも言えず彼の背中に腕を廻した。 ※ハピバ!!不二センパイ☆(実際あたしが年上ですが) 掃除の時間には間に合わなかったに違いないに229ポイント!! そして王子はまた不二さんのクラスメイトに散々冷かされます。 てか、芸が無くてスイマセン<プレゼントとか・・。 だって、中学生男子が何を買うかなんてお姉さん 全然判らなかったのだもの!!メソメソ。 |
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