蝉が遠くで喚いている夏の午後 オレは、 先刻まで確かに確かにセンパイに勉強を教えてもらっ ていた筈なのに 気が付くと、当たり前に彼の腕の中にいた 真昼 間からこの男は何をする気なんだと、文句の一つも云ってやろうと思って 彼を見上げるケド、この人がとてもやわらかい眼でみるから、 何だか とても調子が狂う 「もっと、早く君と出会えれば良かった」 ぽ つりと、不二センパイが呟く 「オレも、そう思う」 2年もの月 日がオレたちの間には横たわっていて 普段はあんまり意識しないんだけ ど たとえば、この夏が終わると彼が部活に来る回数は、減っていくし おんなじ学校で会うことができる日々の終わりも近付く。 だけど 、アンタは進まなきゃいけないし オレも此処に留まっているわけにはい かないんだから 「仕方の無い事なんだけどね」 抱きかかえられ たまま、ふとセンパイの部屋を見渡せば 通いなれた部屋は、それでも時 折僅かに物の配置とかが変わってて そのことを知っているのがオレだけ だと思うと、 恥ずかしい位、幸福だった(勿論、教えてはあげないけど ) 部屋には、大抵彼の好みのレコードが流れてて 漸く聞き取れ るくらいの音量の音楽からは、恋愛を髣髴とさせる異国の言葉で 甘めの 歌詞が流れる。ねえ、オレ以外の誰がこの部屋に来ても 絶対、こんな曲 はかけたりしないで? 「センパイ、さあ」 「なに?」 「ずっと、此処に居たいんだけど」 在り得ない事を、口に出したりする オレも莫迦だけれど 「そうだね、それは素敵だ」 その言葉を否 定しないアンタも愚かだと、思う 突き放せば、イイのに。 もう 、手遅れかも知れないけど。 「・・・・・明日、部活行くくせに」 未来へと、進むために。時を進めるために。 「越前クンだって、そ うでしょ?」 そうだよ。知ってるよ。 なんだかんだ云ったって 、 アンタは、進まなきゃいけないし オレも 「・・今日、泊まってもイイ?」 だけど、この部屋は オ レの知ってる何処よりも居心地が良いんだ 2002.07.21 |
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