「呼吸が苦しい」 「運動した後だからじゃない?」 「体温が上昇する」 「血液の循環が活発になっているんだよ、ソレ」 「胸が、痛い」 「病院行けば?」 そういや、知ってる? ドキドキするのを恋と勘違いすることって多いんだって。 よく映画とかであるじゃん、危険をともに乗り越えた男女が結ばれたり。 何にせよ、特別な状況って恋に落ちる確率絶対高いよね、ねえ。 そんな事を、一気に言われる辺りで もう既に何だか拒まれている感が否めない。 勘違いなものか。 勘違いであれば、まだ幾らか救われる。 何処をどう間違えて、自分と同じ性別のしかもこんな生意気なガキに 恋をしなければならないというのだ。 其の生意気ささえ、可愛いなんて浮かぶのだから、仕様が無い。 もう、充分重症だと悟っている。 例えば、在り得ない話では在るが今此処に世界の危機とか何か 大それたものが訪れて(或いはオーソドックスに恐竜だか怪獣だか 襲ってきても良い)俺たちが危険に曝されたりしたならば、お前は 勘違いしてくれるだろうか。心拍数の変化を恋だと。 馬鹿げた考えに、らしくも無い溜息を吐いた。 無遠慮にそれを眺めていたリョーマは些か驚いた顔をする。 「うっわ、あの跡部景吾が溜息吐くなんて超珍しいもの見た」 「お前の責任だろ、バーカ」 「だから、それ勘違いなんだって。アンタ、男が好きな人?」 「冗談」 「なら、俺男だし」 「お前なら、良いんだよ」 「・・・バカ?」 「お前は、勘違いだっていうけどな。 勘違いでお前が手に入るなら、一生勘違いしていてやる」 「恥ずかしくない?言ってて」 「俺のものに、なれよ?」 ふうん、とリョーマは目を細めた。 少し強い風が辺りを掠めて、さらりと艶の良い黒髪が靡く。 眼前にある、顔にまあ仕方ないか。と思った。 「――口説き文句としては、合格かな」 言って、クスクスと笑う。 一体それは、お前の得意とするところのどっちつかずな曖昧な 表現で、詰まる所どうなんだと聞きかけて辞めた。 「好きだって言われたら、嬉しいものではあるよね。やっぱり。 苦しいんだっけ、アンタ。ならさ、俺看病くらいならしてやるよ」 「当たり前だろ。俺様に好かれて断る奴なんざ居ねえよ」 「あんまり、調子扱くなよ」 笑う顔に、心臓が跳ねる。 取りあえず、今に見ていろ。 引き寄せた小さな身体の重みに、きっと退屈させられないであろう 日々を思えば自然に笑みがこぼれた。 |
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