アンタさえ居なければ、なんてしょっちゅう考えている。 ホラ今だって、そう。 例えば休日 こちとら、日々の部活動の練習で疲れているっていうのに 有無を言わさず、携帯の着信音が鳴り響く。 誰からか、なんてもう確認しなくたって判る自分が ひどくムカツクんですけど。 口惜しいから、切ってやろうかとも思ったけれど そんなことしたら奴のことだ。 家にまで、やって来るに違いない。 ――ああ、もうアタマ痛い。 別に、携帯に恨みは無いんだけれど心なしか 扱いが乱暴になる それも、これも全部アンタのせいだ。 「ハイ」 「おっせーよ、何してやがる」 口を開けば憎まれ口ばかりだ アンタが一寸イイ台詞吐くのなんて あの時くらいしか聞いていない。 しかも、それですらよくよく考えるとムカツク気がする。 あんたのチィムメイトから聞いたんだけど 今まで付き合った女と長くて1ヶ月短いと一週間 そんな短期間で別れていたらしいし。 その女の子の気持ち、痛い位判るよ。 それなのに、モテルんだから不思議でならない。 なまじ顔がいい分こいつのこんな俺様な性格に 拍車がかかったのぢゃないだろうか。 自分の我慢強さに少し自分でも吃驚したりする。 俺も我が儘だの何だの他人から言われるけれども アンタ程ぢゃ無い自身はある。 今日だって、ホラ。 「今から、家に来いよ」 機嫌の良さそうな、耳に心地よい低音 「ヤダ、っていっても意味ないんだろ?」 明日は、日曜日だし、部活も無いし おまけに天気予報ぢゃ雨だ、逃げ場が無い。 明日が休みなのがせめてもの救いだ。 泊まりに来いって言われるのはもう判っている。 「当然だろ」 アンタの頭の辞書にはきっと人のことを考えるという 言葉は抜けているに違いない、なんて思った。 「俺、疲れてるんだけど」 「で?」 あ、少し声が変った。 「景吾、しつこいんだもん。疲れるから、ヤダ」 「バアーカ、何言ってやがる。愛あってこそだろ」 アンタの口から愛とか言う単語を聞くとは思わなかったよ。 うわ、似合わない。 どんな顔しているんだろう。 殆んど無理やりに切れた電話をベッドに投げつけて 仕方なく服を着替える事にする。 どんな、服着ようかなんて悩むのもアンタと 付き合いだしてからで。中々決まらずに苛苛する。 アンタはきっと俺がどんな恰好で行こうと気にも留めない。 なのに、何度も着替えなおすこんな自分もアンタのせいだ。 アンタさえ、居なければ 俺の呼吸は今より楽になるに違いなくて。 玄関のチャイムを鳴らすなり、余り人気の無い 広すぎる家の中から聞きなれた声が掛かる。 「俺の部屋に上がってこいよ」 また、玄関に飾ってある絵が変っているし。 (コイツの家はどこから金が出てくるのだろう) アンタの、部屋も家の中も広くて羨ましいだなんて 思ったけれども 俺が居ないときの殆んど無人に近いこの空間に アンタが居る事を思うと、何か痛い。 それだから、仕方ないと思いつつも毎週のように此処を訪れる。 寂しいなんて、アンタがまさか思うわけ無いとしても。 螺旋状の階段を上り終えると、待ち構えていたかのように 部屋の中に引き込まれた。 油断していた事もあってか抵抗すら出来ず もう馨りすら慣れたベッドの上に押し倒される。 俗物的だなぁ。 もう一寸位我慢して欲しいものだ。 誰と比較したわけでも無いけれど このヒト、キス上手いよななんてボンヤリ思った。 上手いし、俺の扱いとか雰囲気とか 慣れている、と感じる。 場慣れしている感じだ。 流石に、俺が男だということもあって 初めは少し戸惑いながらのコトだったけれど 二度目からは、ひどく滑らかにコトを運ぶ。 俺が、戸惑う暇も無いくらいスムーズに キスをする、身体に触れる、重ねる。 其の度に、どうしてか今までアンタが抱いてきた 女たちのコトを考える羽目になる。 仕草、一つ一つに昔の女の影を見つける。 今、こういう風に俺を扱うが如く 誰かを、今まで扱ってきたんだろう。 ムカつくけれど、一体何にムカついているのか ホント言うと判らなくなりそうだ。 アンタに、原因があるのは先ず間違いないけれど。 「相変わらず、慣れね―な」 「う・・・っさい」 慣れてたまるか、こんな事。 そうなったら、いよいよ俺も終わりだ。 アンタの思うつぼに間違いない。 それも一体、誰と比較しているのか。 この身体を、誰と比較しているのか。 俺を、誰と重ねて抱いているのか。 アンタしか知らない俺は気になって仕方が無い。 アンタさえ、居なければ。 「お前さ、」 「・・・っ、な、に」 「俺以外の奴と、こんなコトするなよ」 やらないよ。 アンタこそ、ヒトの事とやかく言う前に 取り合えず携帯の女子の名前のアドレス全部消せよ バカ景吾。 やらないよ、イタイし疲れるし、だってもう 絶対アンタしか駄目な気がする。末期だなあ。 ・・あー、どうしよ。男として、それはちょっとヤだな。 アンタさえ居なければ、俺はもっと健全に生きれた筈だ。 こんな、俺様な独占欲強いバカに一喜一憂したり 声を、荒げて叫んだり。 頭痛薬を飲んだり、休みの日だってのにベッドに臥したり 部活のセンパイに遅れる言い訳を考えたり 見知らぬ女に苛立ちを覚えることだって無かったんだ。 アンタさえ、居なければ。 波に押し切られて、意識を手放しかけた寸前に 抱き寄せる振りをして思い切り、その背中に 爪をたててやった。ザマアミロ。 少し、眉を寄せたアンタをおぼろげに見て其の侭 真っ暗な闇に意識を落す。 部活動のとき、チィムメイトに見られたら ねえ、どんな言い訳をするつもり。 女の子に見られたら、もしかしたらちょっと 嬉しいかも、知れない。 「お前、背中いてーんだけど」 「それ位我慢!俺のほうが毎回イタイんだから」 毎回毎回御丁寧にキスマークまで遺してくれるから こっちは必死で繕う羽目になっているというのに。 「て、いうかお前何不機嫌なんだ今日」 うわ、鋭い。 普段ちっともヒトの感情なんか気にかけないくせに どうしてこういう時にだけ勘が冴えるんだ、アンタ。 俺は、観念したように呟いた。 「景吾、俺が何着て来ても何も言わないけど 俺、すっごい服迷ってるんだよ」 「そりゃあ、お前何着ても可愛いから仕方無いんぢゃねーの?」 「・・・ベッドでの、扱い慣れてるし」 「お前の時はいつも心臓爆発しそうだぜ?」 「ケータイ。女のアドレスとか入っているし」 「ああ、悪ィ。気にしてるんなら消してやるよ。 ―――と、これでイイか?」 片手で操作して見せる。簡単な操作で、消える。 其の程度にしか思っていない人間のアドレスを 後生大事にとっておく辺りがムカつくんだって。 「アンタ、俺が居なければ良かったとか思わないの?」 「ああ?」 「俺は、アンタさえ居なければ」 吐き出すような声に、自分を見つめる視線を感じた。 「アンタさえ居なければ、楽なんだよ絶対! 服選んだり、苛苛したり、疲れたり絶対にしないのに。 見知らぬ女に、アンタが俺を重ねてるんぢゃないかとか 思ったり・・・」 荒げそうになった声を押し殺すと とても意外そうな顔をしてアンタは俺を見ていた。 「何だよ」 その後、余裕のある笑みを浮かべる。 「お前さ、可愛いところあるぢゃん」 「は?」 「それって、かなり強烈な告白だな」 「・・・・嘘」 今のが、告白なのかよと思って慌てて俺は自分の言葉を 反芻する。―――何、言ったっけ。 告白になるような事一つも言っていない。 口に出すと、無意識ならなおイイじゃねえかとか 相変わらずの口調でアンタは言った。 「好きだぜ、リョーマ?」 自分の意識のあるときに(情事の最中で無いときに) そんな台詞を聞いたのは初めてかも知れない。 こんな言葉で良いのならば幾らでもいってやるよと くしゃくしゃ髪を撫でられた。 此処でうんとか、素直に応じようものなら コイツのことだ、絶対四六時中愛してるだの好きだの 言ってくるに違いないけれど 「言って」 俺が欲しかったのも多分、こんな言葉だ。 アンタさえ居なければ、俺の呼吸は楽になる。 息苦しいのはきちんと俺もアンタを好きだからか。 「好きだ」 もう一度、という前にまた景色が反転した。 俺は、先程アンタを引っ掻いた爪をもう少し伸ばそうかと思った。 内臓まで、引っ掻けるくらい。 心臓に、届くくらいに。 *アダルティな雰囲気を狙って撃沈しちゃいました。 何処の少女漫画ですか、コレ! 跡部様は王子にベタ惚れです。是以後やたら愛を語りだします、多分。 王子は自分の感情が判って無いだけで見ての通りちゃんと奴が好き。 跡リョ、書くの楽しいです。 |
| SEO | [PR] 花 冷え対策 再就職支援 わけあり商品 | 無料レンタルサーバー ブログ SEO | |