「先輩の誕生日って珍しい日なんッスね」 と、思えばそういう話題からだった。 「うん。2月29日は4年に1回でね。日本語では閏年って いうんだよ」 「あー・・・leap year?」 「そうそう」 それじゃ、毎年祝ってもらえなくて寂しいじゃん。と言うと 彼は柔らかく微笑んだ。 「今年はその分越前に祝ってもらうから」 ・・・・・・・・・・・・こういうのも年の功なのだろうか? 自分の魅力というものをよく理解しているんだろうなと思う。 「僕と付き合わない?」 不二から突然そういわれたのは、部活で主催されたクリスマスパーティーの 帰り、要するにリョーマの誕生日だった。 あんまりにも軽い調子で言われたので、 「オッケー。どこまで?」 とお決まりの台詞を口にすると、一頻り笑われて 「最果てまで」 と返されて首を傾げたことを思いだす。 だって、全然そういう前兆―――――なかったわけじゃなかったか。 不二は結構スキンシップの激しい人だな、とリョーマは思っていた節が ある。というのも、ボディータッチが多いというかやたら構ってくると いうか、見かけると有無を言わさずに抱きしめられる辺りだとか。 それもこれも、傍にナチュラルにスキンシップの大袈裟な先輩がもう 一人居たので、『まあ、菊丸先輩の友達だし』とか『傍に居たらそうなるか』 と勝手に解釈して納得していたのだが、如何やらそれは違ったらしい。 『おチビちゃんって不二に気に入られているね〜』 という件の人物の言葉で初めてそれと自覚した。 不二に後々になって伝えると、いつもは柔和な笑みを絶やさないある種の ポーカーフェイスの彼が流石に表情を変えて、 『僕としては、かなりアピールしていた心算だけど』 と言われてしまった。 ・・・・・・・・そういえば、そうだったかもしれない。 付き合うって如何いうこと?と聞いた。 彼は、少し悩んでゆっくりと一緒に居る時間が増えることだよと言った。 一緒に居る時間が増えて、一緒に未来を見つめる時間が少し出来ると いうこと。越前の未来の中に、僕の居るスペースが組み込まれて、 反対に僕の未来の中に君の居場所が出来るってことだよ。と。 だから、暫く考えて首を縦に振っていた。 それって、ステキなことかも知れないと一寸ワクワクしたからだ。 「プレゼント」 「ん?」 「先輩、プレゼント何が欲しい?」 当然の流れでそう訊ねるのは、付き合ってそう日が長くないのもあるが 不二は中々に平生から得体の知れないところがある人間だったので、 こういったイベントに何が欲しいのかなんて皆目見当も付かなかったからだ。 「プレゼントくれるの?」 「そりゃあ、まあ」 恋人同士だし、とは照れくさくて口に出せるわけがなかったがぱあっと 頬を薔薇色に染める麗しい恋人の姿を見て、悪い気はしない。 「俺に、あげられるものだったら・・・・」 いつも強気なリョーマにしては珍しく、語尾が弱く消え入るし 視線が泳いでいるのが自分でも分かった。 駄目だ、まともに顔が見られない。恥ずかしい。 「本当!?・・・如何しよう、凄く嬉しい。 僕凄く欲しいものがあるんだけれど」 「あんまり高いモノとかは・・・」 「越前からしかもらえないものだよ。それも、値段がつくようなものじゃ ない。まあ、ある意味何よりも貴重だけど」 もったいぶった言い方をする不二に決して気が長いほうじゃないリョーマは 何?と更に詰め寄る。 「聞きたい?」 「聞きたい!」 「どーしよっかな。言ったらくれる?」 「・・・・・・・・・・それは、分からないけど」 「どうしても聞きたい?」 「聞きたいッスよ!!」 「僕ね、越前が欲しいな」 ――――――――――聞かなきゃ良かった。 此処まできておいて、カマトトぶる気はないがまるで天使のような 純粋無垢穢れのないようなアルカイックスマイルでそんな世俗的なことを いけしゃあしゃあと言ってのけるこの人は、今更ながら良い根性を してるよなと他人事みたいに感心する。 「くれるの?くれないの?」 「バッ・・・・あ、あげないっ!!ってか、先輩の馬鹿! 何でそんなこというんだよっ!!」 「酷い。僕これでもまるまる2ヶ月も待ったし、片思いの期間も 含めたらそれこそ半年以上も待ってるんだけど?」 半年って、まだ夏くらいじゃないか! アンタそんな前からこんなことを考えていたのか!とか突っ込みたいことは あるけれども一先ずそれは置いといて、だ。 「キスも、してもらったことないし?」 ぽつり、と呟かれた一言に今度はリョーマが頬を紅潮させた。 そう、そうなのだ。 こんなことをさらっと言ったわりには、不二との付き合いは未だ 清いもので、寧ろ周囲から言わせると清すぎるくらいのもので 不二の悪友である菊丸からは「お前ら修行僧かよ!!」と突っ込みまで 受けたくらいに、ピュアピュアなお付き合いをさせていただいている。 登下校は一緒、部活のあとはお互いで待ち合わせ、たまに一緒に出かけたり あとは、お互いの家に行ったりメールをしたり。 (これって、友達や先輩後輩の関係でも出来ることだよね・・・)と 思ったが、如何せん自分から言い出すのも何だかだし、不二は幸福そうに 見えたので特に言い出すこともなかった。そもそも、それが間違っていると 言い出せるほどにリョーマとて経験豊富なんかじゃ絶対にない。 「越前が、もう少しオトナになるまで待っていようと思ったんだけど。 僕もお腹すく年頃だし? 赤頭巾ちゃんは美味しそうだし、ね?」 ずい、と寄せられた整ったかんばせに心臓が違う生き物みたいに 飛び跳ねた。サカナになってしまったみたいだ。 チョン、と指先で唇を突かれる。 顔に火がついたみたいに、全身の熱が集まってきてうっわぁ、と目を 見開くと逃げ場がないことに気付かされた。 好き、と言われて。それを受け入れて。 俺は先輩が嫌いじゃないし、先輩は俺が好きで、それって恋人として とっくに成立していて。 頭の中で畳み掛ける問題の数々を整理しきれず、心臓だけがドクドクと 音を立てて拍動を強める最中だ。 「・・・・・・・・なんてね」 悪戯っぽく不二が笑ったのは。 「へ・・・・?」 驚いて瞬きを繰り返すと、くしゃりと髪の毛を撫で付けられる。 「ちょっと意地悪だったね冗談だよ、冗談。 考えていない、とは言わないけれど。君が、良いっていうまで 待てるくらいには好きだから」 「――――――ッ!!」 心臓を壊されるんじゃないか、と思ったのは今日何度目だろう。 冗談? 冗談だって? 不二は涼しい顔をして、手を差し出すとケーキでも買いに行こうかと 告げた。・・・・・・・にゃろう。 「先輩」 「うん?――――――!!」 ぐいっと差し出された手を引張って、距離を詰め唇を重ねた。 重ねた、というよりはぶつけたといったほうが正しい。 大体唇に上手く当たったかすら分からない、が、とりあえず キスはキスだろう。ガツン、とした衝撃は額やら何やらぶつけて クラクラする。違う、息が上手く出来なくてクラクラする? 「え、ちぜ」 吃驚した顔のアンタが見られたからそれで良いんだ、と自分の拙さを 棚にあげた。してやられたり、は性に合わない。 常に対等に居たい、なんて思うのはこれでもちゃんと先輩のことを 見てるから。俺はガキで、アンタにとっては子どもっぽくて、でも ちゃんと同じところまで上がっていくから。 「先輩、おめでとう。ハッピーバースデーhoney?」 目を見開いて、驚いた顔で俺のことを見ている彼の動揺が面白くって 今最高にハッピーな俺は、この後自分の後先考えない行動を身を以て 後悔させられるなんて今はまだ知らない。 息もできないくらいの。笑 ブログにアップしていたときとタイトルは違いますが、内容は 一緒です。遅れましたが、先輩おめでとうございます。 |
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