「好きなんだけど」 本日何度目 かの告白は聞き流そうと思った。 でも、何時も其れでは流石に少し良心 が痛む。 仕方なくリョーマは、目の前でやたら綺麗に微笑む自分より 上背の高い男を見上げた。 「よく飽きないね、毎日」 「 飽きるわけ無いでしょう。君から返事も貰ってないのに」 「アンタは」 少年は溜め息を吐いて、一呼吸言葉を置いた 「手に入れたらき っと興味を失くす癖に」 オレが、他のヒトと違って簡単にアンタの手に 入らないから そんな事言うんだよ。と大きな目を瞬きさえせずに キッパリと言った 「やっぱり、面白いなあ。越前君は」 何の 悪びれた様子も見せず、楽しげに不二は笑う。 些か眉をひそめるリョー マも負けじと反論した。 「有り難う御座います。オレもアンタの喰えな い性格面白くて 気に入ってるよ」 踵を返して立ち去ろうとす ると、何かの抵抗に遭いリョーマは はたりと足を止める 不二が 、彼の上着の裾を握り締めていた。 「何のつもりっすか?」 「 何で、僕が手に入れた途端興味を無くすって思ったの?」 些か、真摯な パートの低い声で不二が立ち去ろうとした リョーマに問う 気だ るげに、烏の濡羽色の鬢髪をさらりと掻き揚げて 俯いたままに、リョー マは答えた 「先輩たちが、言ってたもん。 あいつは『釣った 魚に餌を与えない』タイプだって」 ふうん。と不二は短く声を出して目 を細めた 口に出したのは、其れが全てで。 怒った素振りは何に も無かったのだけれども リョーマはホンの少しまずい事を言ったかもし れないなと、 思い直しその他先輩達の身を案じた 「でも、諺と か比喩表現ってキミ確か苦手じゃなかった?」 帰国子女のリョーマは、 英語をかなり巧みに操ることを 不二は当たり前に知っていたし そして、リョーマがその代わり日本語表現が少しだけ 苦手なのも知って いた 「親父に聞いた」 リョーマからの返答で成る程。と洩らす (小父さんも、御丁寧に教えなくて良い事を教えるんだから) 見当外れだが、不二は南次郎を恨めしく思った 言われた事は、強ち嘘と も言い難い 但し、リョーマ以外のヒトに限って、だ。 本気でな い恋を手に入れたところで長続きしないなんて 幼稚なこと、それを手に 入れた今の不二は判っている 「オレ、魚じゃないし。釣られないよ」 「そうだね、人魚姫って感じだよね。魚よりは」 会話になってい ない不毛な掛け合い 「泡になっちゃうじゃないですか。それじゃ」 「駄目だよ。魚だろうが、人魚だろうがこの手で越前を手に入れたら 餌なんてやる前に、僕が全部食べてしまうんだから」 こんなふうに 。と 不二は俄かにリョーマの手を捕らえる 餌をやって観賞用に 育て上げる気も無い 餌をやらずに飢え死にさせる気なども無い けれど海にも帰さない 慌てて身を捩ろうとしたリョーマはは思いがけず 噛みつくようなキスをその唇におくられた じんわりと滲む赤い 味 「魚は、食べるために釣るものでしょう? 丁度キミと同格 に」 秒速で速くなっていく循環 目を見開いたままのリョーマに 「好きなんだけど」 繰り返し告げた 大きな目は、あの 強いずっと不二が欲していた輝きで 彼の口を以って 「遺さず、 食べて」 舌たるい言葉を溢した 2002.06.09 |
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