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Naked King




その名前を捨てる気は無いの?と少年は訊いた。
その名前を、お捨てになって。
まるで有名すぎて今更語るでもない悲劇のヒロインさながらの
その台詞は勿論男の耳にまで届いた筈である。
自室で、落ちていく太陽を見つめていた跡部は笑った。

「お前こそ、捨てたらどうだ?歓迎するぜ、戦力は」

「俺は、捨てられないよ」

「ならば、俺の導く答も分かって居ただろう?」

「うん」

それでも、と言いかけて止めた。
所詮そういうことだ、とたちどころに理解したためである。
我が儘を言って幼く思われるのもまた嫌だった。

「俺たちは、戦う定めなんだ」

跡部の物言いが神妙だったから、リョーマも笑った。
まるで映画の主人公でもが言いそうな気障な台詞でさえさらりと
吐いて、それでも尚様になる彼のことは矢張り好きだと認めるしか
無い。羽織ったジャージには、お互いの学校のロゴが入っている。
互いの名に背負うものを否応無しに認識させられる手段だ。
唇を噛み締めたかと思うと、リョーマは徐に袖を通していた
ジャージを脱ぎ捨てる。

「―――――オイっ」

何やってるんだ、跡部が叫ぶ。
ぐしゃぐしゃになったジャージを放ってリョーマはしん、と
彼を見詰めた。

「何も、無いよ。俺は只の子どもで、越前リョーマという
 肩書きしか要らない。
 だから、ねえ。アンタも、今だけで良いんだ」

跡部は暫しその眸に不覚にも魅入って、それからするり、と
ジャージの腕を抜いた。
片方、そうしてまた片方。
ジャージの下には薄いシャツを着込んでいるだけで少しだけ肌寒い、
抱き寄せた痩身に子どもの体温の高さと、早鐘を打つ心臓を知った。

裸に、なってしまえば。

何もかもを脱ぎ捨ててしまえば、こうして只の
恋人同士で居られるのだ、学校も、部活も、互いを分かつ距離を
全て忘れて只の好きあうもの同士で居られるのだ。

「なあ、お前が好きだ」

「うん」

「出来れば、こうして何も背負わない、纏わない、
 只のお前が好きだ」

「うん」

「でも、コートに立つお前にはどうしようもなく焦がれる」

「・・・・・・・・・・俺もだ」

だから、多分俺たちは駄目なんだね。
ランニングを更に捲くり陶器みたいな焼けない白い肌に
直に触れる、微かに淡く桃色に上気する肌、
あがる息は蕩けそうに甘い、いっそ骨ごと喰らってしまえたら
良いとさえ思う。
カーテンを引いて、ブランケットに隠れて一足早い暗闇の中、
白く浮かぶ裸体、それだけで良い。
それだけで良いのだ。

何も纏わない、
何も背負わない、
只彼を愛するだけの自分、愛されるだけの。

重ねる肌に、熱に穿たれてそれでも想う跡部には矢張り
あの青い空、その下の響き渡る歓声と一面の観客が
似合っているからリョーマは切なくなる。
きっと跡部の想う自分もあのコートの上に立っているのだろう、
なんて考えて。















Genius296の若干ネタバレ話。
早く大人になれたら良いねと言ってあげたくなるお話を目指してみました。
ジャージを脱ぐリョマさんが書きたかっただけです。






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