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Not Good Person




運動会、というものがリョーマは実はあまり好きではないと最近
気がついたところだ。
運動が嫌いなわけではもちろん無いが、如何せん彼は個人プレーヤー
だったので集団行動とか仲間との協調だとかそういったものが元より
向いていないのだ。
体操に玉入れ綱引きついでに騎馬戦、だいぶ涼しくなってきたとはいえ
日中はまだ暑い初秋のこの頃に何故折角の休みを潰してまで、
こんなことをやらなければならないのかと愚痴れば、先輩などは
苦笑してお前可愛くねえなと言う。

(だって、それ見たことか・・・・!)

騎馬戦は前と左右、そして乗る人間、余れば後ろでサポート役という
具合に4人、もしくは5人組でするのが常だ。
体格差の開きやすい中学生期においては凡そそのグループは身長順で
決められて、お世辞にも体格の良いとは言えないリョーマは、
その所属するチームは他のチームから真っ先に狙われてしまうのだ。
そして更に運が悪いことに、リョーマは上に乗る役を頂いてしまっていた。

「うわっ・・・・!」

狙うは、4色に染められたはちまきだ。その本数で競う、若しくは騎馬が
崩れたチームから敗退が決定する。
ちょこまかと逃げながらも隙を突いて後ろからはちまきを奪ったり等
上手いこと立ち回っていたが、敵チームに囲まれて万事休すといった
状態だ。
だから、運動会は嫌いだ。
勝ち誇ったような敵チームの騎手の顔を見て苛立ちがこみあがってくる。
自分の性格が、この保守的な国では好感を抱かれないことは知っている。
日頃の恨みだか何だか知らないが、それらをこのときとばかりに
狙ってくる連中が嫌いだ。
タダでやられてやる気はないけれど。

「あのさー・・・」

「何?」

下で支えてくれているチームメイトが問い返してきた。

「俺、このまま負けるの嫌いなんだよね」

「それは分かるな。で、どうする?」

顔は見えないが、多分おんなじようなことを考えている。
にやり、とリョーマは笑った。

「決まってるじゃん。――――――突撃!!」
















「・・・・・・・・・・・・・・・・・ホント無茶苦茶だよ」

「そっすか?」

「無茶苦茶だ。越前ってホント」

何も2回も言わなくても・・・と思いながらリョーマは救護用のテントで
自分の足や手にペタペタと絆創膏を貼ったり包帯を巻いたり忙しい
不二を見た。不二も頭に同じ色のはちまきを巻いている、そうつまり
学年は違えど今日は同じチームで優勝を目指しているというわけだ。
そんな彼が何故自分の救護をしているかと言えば、あの後敵チームに
体当たり攻撃で見事自爆かつ相手の騎馬を崩すことに成功したは
良いが、代償はそれなりに痛手だった。
ひりひりと痛む両手両足を見て、嗚呼、今日は楽しいはずのバスタイムが
憂鬱だと思う。が、それ以上に不二の方が痛ましい顔をした。

「・・・・・・・・・・大怪我したら如何するの」

「大丈夫っすよ。テニスに支障は出ないように俺も考えてるから」

「そうじゃなくて!傷でも残ったら」

「そりゃ先輩だったら、そんな綺麗な顔に傷でもついたら大変だけど。
 俺は大丈夫っすよ」

実際顔は怪我していないし、もし怪我をしても男だから別に気にしない。
そりゃあ、不二くらい綺麗な顔をしていたら傷がつくなんて大変だと
思うけれども自分は全く関係ない。
そう洩らすと、不二は今度は瞬きをしてそれから徐に溜息を吐いた。
・・・・・・・・・・・・何だというのだ。

「今日はもう無理しちゃ駄目だよ」

「はーい・・・あ、でもあと借り物競争が・・・」

「如何しても出なきゃ駄目?」

「まあ、他は代わってもらうんでそれくらいは」

やっぱり渋い顔をされるが、やがて気をつけるんだよと一言告げられる。
ということは、OKということか。
ややホッとして、それから分かりましたと一応了承を示した。

「宜しい。じゃあ、ハイこれ」

「へ?」

どこに持っていたのか、ごそっと不二が取り出したのは大量の
はちまきだった。それも見事に3色、自分たちのブロックのカラーでは
ないはちまきだけが揃っている。
何、これ。
そう言いたかったのが分かったのか、にっこりと微笑むとさっき僕も
騎馬戦に出たんだよと彼は告げた。

「越前の敵討ち♪」

「―――――ども」

あの王子様な外見の彼がどうやってこの大量のはちまきを並居る生徒
たちからゲットしたのか気にはなったが、それ以上深く考えないように
した。懸命な判断だ。














(不二先輩って、なんだかんだで良い人だよね・・・・)

本日保護者役を演じている不二からOKのでた借り物競争の仕度を
しつつ、考える。
入学当初はそれこそ腹の底が読めない先輩だと思っていたし、
油断ならないと思っていたし、腹黒いと思っていたし、人気のある
先輩だと聞いてもこんな嘘っぽい笑い方する人なのにと思っていたが、
ついでに言えば今も結構思っているがその一方で、それも真実だし
他に分かった真実も沢山あると思う。
ああ見えて、弟がいるからなのかきちんとお兄さんな一面があるし
お姉さんもいると言っていた所為かチームメイトの中でも、かなり
気を回してくれる。面倒見が良いし、実は友達思いだし、テニスも
強いし、男にこれを言っていいのか知らないけれど美人だ。
今日も文句を言いながら、あれで心配してくれていて手当てもしてくれた。
多分、自分の無茶を見て一番に駆けつけてくれたのだろう。
1年生でレギュラーに進むのは珍しいからか、チームメイトの中で一番
年下だからか何かと可愛がってもらっていると思う。
そうか、不二先輩、良い人だよな。

そんなことを思って、走り出したのがいけなかったのかも知れない。

並べられた紙を拾い上げて、一番に思いついたのがその人だった。


「不二先輩!一緒に走ってください!!」

「・・・・・・・僕?」

俺の差し出した紙と俺を見比べて、本日初めて動揺する先輩を見たが
生憎一番になることをのみ考えて走り出した俺はそんなこと気にして
いなかった。











ゴールで、係りの人間がマイクを持ってこちらに寄ってきて
まだ息も絶え絶えの俺にそれを差し出す。お名前は?クラスは?
訊ねられて何とか答えて、では紙には何が書いてありました?と
訊かれたので、握っていた紙を広げた。

「すきなひと」

ざわざわざわっ!!
一気に校庭中が騒ぎ出し、悲鳴とか歓声が聞こえて何ごとかと目を
丸くする俺と真逆に先輩はニコニコと対人的な笑みを浮かべたまま
先程と打って変わって落ち着いている様子だった。
係りの人間も驚いた風だったがややあってマイクを先輩に向ける。

「それで、あの・・・・」

煮え切らない言い方に何なんだと俺が眉を顰めるより早くそのマイクを
奪って先輩が微笑んだ。必殺アルカイックスマイル。

「返事は勿論オッケーです☆」

宣誓よりも校歌斉唱よりも大々的な悲鳴とか歓声とか怒号とか何だかが
一気に辺りを包み込んだ。














「・・・・・・・・・・だってラブだと思わなかったんだもん。
 ライクだと思ったんだもん。ラブならラブで愛している人はとか
 書けばいいじゃん。普通ライクだと思うじゃん。死にたい俺・・・」

「おチビ!おチビちゃん!しっかりして!!」

その後は最悪だった。
クラスメイトに冷やかされ、先輩に冷やかされ、先生に冷やかされ、
最初は疑問符ばかりだった俺も流石に気づいた。気付いてしまった。
それから死にたくなった。
穴があったらいっそ埋めてくれ。

「いーじゃん。一部の女子は超喜んでたし!」

「死にたい」

「不二も見かけはほら、あんなだからさ!!」

―――――さっきから、アンタ何の慰めにもなってないんスけど。
膝を抱えてしくしくと落ち込む俺に、菊丸先輩が必死のフォローを
入れてくれているがちっともフォローになっていない。
今になってから膝が痛んできた。
これだから!
これだから運動会なんて!!

「越前」

「ぎにゃっ!」

変な声で叫んでしまったが、不二先輩がひょっこりと顔を出して
俺は土下座する勢いで謝った。
スミマセン!ほんとスミマセンっした!!
日本のサラリーマン並みに頭を下げた。
俺だけならまだしも、とりあえずノリで誤魔化してくれた先輩に感謝だが
迷惑をかけてしまったことを必死で謝る。

「別に僕は気にしていないよ」

「先輩・・・・!!」

アンタ良い人だ。天使だ。腹黒いとか言ってすいませんでした。
本当に綺麗だし、心が綺麗だと外見までそうなるのだろうかキラキラの
栗色の髪の毛、そっか色素が薄いから睫毛までこんな栗色・・・・睫毛?
ちゅ、というわざとらしい音とともに唇に柔らかいものが触れるまで数秒。
毛穴レスな肌と、吸い込まれそうな瞳を凝視する俺に彼が激しくKYな
一言を投下していくまで数秒。

「僕も、好きだから」

今度こそフォローも何も入れられないくらい見事なカウンターキックで
今年の運動会は幕を閉じることになる。
















KY(空気読めない)・・・・数年後これ読んでも分からないだろうな(笑)
季節感を大事に運動会ネタなんぞをしたことが無かったな〜と思って
勢いだけで書きました。1時間掛からないくらいの早業でした。
勢いで読んでください。
私は運動音痴なので運動会嫌いだったんですが、今考えると青春だよね。




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