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Promises




君が生まれたときから愛している。
















ソルティーレゴ魔法学校
其処から学校への特別特待生としての案内状が届いたときリョーマは
目を白黒とさせた。
倫敦の郊外、割と裕福な家庭が多いこの町の片隅で遠い親類を頼って
生活しているのは自分が生まれて直ぐに両親とも事故で他界したのだと
聞いたからだ。

「ひっどい嘘吐くよね、人間って」

親戚の家族は何故かリョーマが外に出ることを酷く嫌った。
学校も碌に行っていないし、たまの外出もすっぽりコートに覆われて
監視の目もきつくあっという間に家に連れて帰られては、
屋根裏の小部屋に押し込められるのが常だ。

「それでおチビちゃんってこんなおチビちゃんなんだね」

こう見えて高貴な方の使い魔です☆と名乗った青年は何気に失礼なことを
言ってのけたので睨んでやる。
到底信用できない話だと思った、そう彼が黒猫から目の前で姿を変える
までは。曰く、人間界で魔法を使うのはタブーだがまあこれくらいは
仕方が無いんじゃない?とのこと。
そうして手土産と称して珍しい品物の数々を見せられたリョーマは
すっかり魅了されてしまった。振っても振ってもお菓子の出てくる
バスケットに、動くテディベア、自ら声を出して謳いあげる新聞、
そうして何より彼はリョーマの両親のことを教えてくれたのだ。

「おチビのご両親は、二人とも優秀な魔法使いだったんだ。
 人望も厚くて、魔法界のみんなにも慕われていた。
 だから、だからこそ己の身を犠牲にしてもお前を護って
 世界を護ったんだよ」

「・・・・・どういうこと?」

「お前はな、世界の希望なんだ。生き残った子ども、世界の全てを呑みこむ
 絶対悪に唯一対抗できる希望の光」

俺と一緒に来るかい?
差し伸べられた手を取らないなんてありえない。













「じゃあ、小父さんも小母さんも俺の両親が魔法使いだって
 ことは知ってたの?」

「多少なりとも血の繋がりがあるんだから、知ってるさ。
 でも、残念ながら多くの人間は魔法を否定したがる。
 だって、自分たちの理解が遠く及ばないものだから。
 だから、おチビちゃんは本当なら
 英雄の息子として俺たちの世界に迎えられるべきところだったのに、
 苦労させちゃったね」

蛇苺味蜂蜜飴、だのよく分からないキャンデーを与えられて列車に
乗り込む。一見何の変哲も無い列車、だが中に居るものたちは全て
魔法使いかその使い魔、或いは魔物だと言われて驚いた。今から
自分が行く学園の制服だろうか?同じ年頃の子どもたちは皆一様に
黒いマントに赤・緑・青・橙のネクタイをして白いブラウス、女の子は
黒いスカートに男の子は黒いズボン、成る程絵本で見たことがある
魔法使いのイメージを彷彿とさせる。

「同じ年頃の子が多いから、友達は直ぐに出来るよ。
 ただ此処はまだ学校長の庇護圏に入っていないから、
 何時何があっても可笑しくない。まだ俺以外と関わっちゃ駄目だよ」

「アンタは・・・」

「ん?」

「アンタは、友達になれないの?」

ことり、と首を傾げたリョーマに使い魔は瞠目してそれからケラケラと
笑った。これでもそれなりに長い間、そう人間からしてみれば結構長い間
生きてきたがそんなことを言われたのは―――――

(いや、初めてでもないか)

『――――――君とは、友達になれる?』

そういや、アイツも変な奴だった。
差し出された手を思い出して、余計に可笑しくなる。
不安そうに揺らぐ大きな瞳、瞳の色は漆黒でまるで夜空を写取った
ような深い深い闇の色だ。親父さんに似ているな、其処は。
かつて共に歩いた、共に同じ景色を見た盟友を思い出して胸がちくりと
痛む。それに気付かれないようにと青年は口元を歪めた。

「なれるともさ。俺はおチビちゃんが困ったら、何処に居ても
 飛んできてやるよ。俺の名前は英二、覚えた?」

「俺はリョーマ、越前リョーマ。宜しく、英二!
 ねえ、英二。英二は使い魔だって言ったよね?」

「うん?」

「その主人、も、俺のこと知っているの?」

「勿論。ただ、俺と主との契約があってね。俺の口から、主の名前を
 告げることは出来ないんだ」

ふうん、と言いながらリョーマは何となく腑に落ちなくて眉を顰めた。
主と使い魔、その関係が先だってあるのだとすれば恐らく自分を此処に
つれてきたのは主の命令だということだ。そこまでは分かる。
それなのに、名乗りもしなければ英二からも口に出しにくいらしいと
いうのは一体如何いうことだろう?
何故、その人は俺を此処に呼んだ?

「・・・・納得できないって顔してるな」

「そりゃあ、まあ」

「御免な。だけれど、まだその時期じゃない。
 けれど、覚えていて。
 主はお前を大事に思っている。お前のためなら、何だってしてやると
 思っている。それくらい、お前を大事に思っているんだ。
 だから、どうか、アイツを嫌わないでやってくれ」

奇妙な言い方をすると思った。
会ってもない人間をどうやって嫌えというのだ。
レールはやがて夜空に融けて、列車は道なき道を走る。
汽笛の音を遠くに聞きながら、夜風を導こうと窓を開けて
身を乗り出すと倫敦の街並みはいつしか足元にまるで模型のように
小さく小さくなっていった。

















「お前が越前か。歓迎しよう」

「お前って超有名なんだぜ!!すっげーのな。生き残った・・・」

「こら、桃城!・・・・・・すまないね」

「まあ・・・・困ったら言えよ」

「君のデータには至極興味があるな」

「な、何かあったら俺たちがフォローする」

「・・・・・・・・・・はあ、どうも」

友達?というか、寮が決定して直ぐに其処の先輩たちとは仲良く
なった。友達も、英二と名乗った彼が言っていたように直ぐに
出来た。先輩方にも言われたが、どうやら此方の世界でリョーマの
名前と言うのはとてもとても有名なようだ。
歩くと見知らぬ者にまで声を掛けられて、移動教室の度にざわめき、
終いには教師までもの珍しそうに見てくる始末だ。
俺って見世物パンダ状態なんですけれど。猫の姿になって、
部屋に来た英二に告げると腹を抱えて彼は笑った。・・・・失礼だ。

「まあ、おチビちゃんの場合は、そのルックスもあるんじゃない?」

「何?俺そんな酷い容姿してる?」

確かに此処の学園の生徒は、リョーマが見てしても存外に容姿の
整った者が多い。そんな中に居たら、自分の容姿だと逆に悪目立ち
するとでも言うのだろうか?すると、ぱちくり目を見開いた後、
とんでもない!と黒猫は言う。

「お前の容姿は、魔法使いからしてみれば理想的な容姿なんだぜ!?」

「へ?」

「黒髪に黒い瞳、透けるように白い肌。俺たちは人間と違って、
 少々闇に近い性質を持っているものが殆どだからどうしても漆黒
 というのに焦がれるんだ。お前は綺麗だよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・どうも?」

疑問系になってしまったのは、それが男に向けた褒め言葉なのか
どうなのかに少し悩んでしまったからだ。だが、魔法界の褒め言葉が
人間界の褒め言葉と一緒とは限らない。
これもスタンダードな褒め言葉なのかも知れなかった。

「信じてねえな〜俺の主も言っていたよ!」

ぴくり、とリョーマはその言葉に気をとめる。

「俺!会ったの?」

しまった、という顔を猫がしたが渋々と頷く。何処で?何時?
しかし先程入学式と寮決めがあったばかりだ。会おうと思ったら
はっきり言って全校生徒、全学年、そして教師に来賓、全てが
その場に居たわけでそれが少しのヒントになるとも思えない。
ただ、この学校と何かしら繋がりがある人物であることは確信できた。
だから、自分を此処に呼び寄せたのだと。

「・・・・・・・・まあね。んで、これが」

英二はくい、と自分の首に巻かれているリボンを引張った。すると、
其処についていた大きめの鈴が転がる。アクセサリーかと思っていた
それは煙を立てて形を変え、やがて大きな箒に姿を変えた。

「わあ・・・!!」

「俺のご主人様から、お前に。入学祝だってさ」

「凄い、あのっ、あのねっ」

「ん?」

「ありがとうって、伝えて?」

今まで、ずっと肉親と呼べる人も優しくしてくれる大人も居なかった。
だから、プレゼントなんて貰ったのが初めてでそれが何よりも嬉しい。
その主と言われる人物が何者であったとしても良かった。
ただ、その人は自分の味方であることを肌で感じる。
どういたしまして、と黒猫が目を細めてリョーマはぎゅ、と箒を
思い切り抱きしめた。











「リョーマ君、移動教室ですよ」

寮の階段を下りたところで、声を掛けられる。確か、先日仲良く
なった同じクラスの生徒だ。壇、と名乗った。
ニコニコと人好きのする笑みは悪い印象を受けない。うん、と
頷くとそれを見計らっていたかのように女子生徒も寄って来た。

「あ、あのっ!私たちも一緒に行って良い?リョーマ様と仲良く
 なりたいなあって」

「・・・・・様、は止めてくれない?そしたら良いよ」

「!!分かりました、リョーマ様!!」

―――――ちっとも分かっていない。

「私が朋香で、こっちの子が桜乃っていうの」

「と、朋ちゃん!ご、ごめんねリョーマ君」

何だか賑やかな集団になってしまった、とリョーマは苦笑する。
それでなくとも目立っているらしいことは理解しているが、これでは

「―――――――――――廊下は静かに歩くこと。
 それでなくとも、君は例外的な存在なんだ目立って如何する?
 目立つことが趣味なのかい?越前」

「!!」

背後に突然現れた気配に、バッと後ろを振り返る。
今し方まで何の気配も無かった。
なのに、其処にはリョーマたちと同様に黒いローブを羽織り、
違うのは全身黒いシャツ、黒いズボンと黒で統一された服を着た
青年が居た。唯一の色彩と見えるのが、彼の鮮やかな金に近い栗色の
髪の毛で、肩にやや掛かるその髪の毛に顔の左半分は
覆われるようになっており見えない。ヘリオトロープと藍色の
入り混じる瞳は不可思議な色合いで、白皙の美貌も相俟って彼を
人形染みたものに見せた。一見すると、随分な優男だがまとう空気の
重苦しいまでの圧力がそれを帳消しにしても余りある。
緊迫した空気が立ち込める中、壇が口を開いた。

「ふ、じ先輩」

「君たちが少等部の時分は確かにそうだったね。だが、生憎今は
 立場が違う。今日から、君たちの黒魔法担当で授業を教えることに
 なったから」

先生、と呼ぶべきでしょう?
疑問系だが、有無を言わさぬ感があって生徒たちは一同口篭もる。
何となく、気に喰わない。
リョーマは不躾に注がれる視線に対して、睨み返した。













『不二周助』

黒板に書かれた神経質そうに整えられた文字を見る。
不幸中の幸いか、あの年若い教師からは遠い後ろのほうの席だったので
リョーマは近くに座った壇と話をすることが出来た。
彼曰く、不二と名乗る青年は昨年まで此処の生徒、つまりは自分たちの
先輩にあたる関係だったそうだ。

「普通なら、大学院に行って博士号を取って、それで先生になるんです。
 でも、不二先輩は・・・そもそもが規格外の人でしたけれど大学まで
 此処の学校で通って直ぐに先生になることが出来た。
 それを理事長の贔屓だと言うものも居ましたけど・・・・・・・
 彼の実力を前に誰も文句なんて言えなかったんです」

「そんな凄い人なの?」

「凄いも何も!リョーマ君も聞いたことがあるでしょう?
 世界の絶対悪・・・・あの人が復活して、それまで平和だった
 世界も少しずつ、確実に敵と言える存在が出てきた。
 不二先輩は、一人でドラゴンを倒したこともあるんですよ」

ドラゴン、ドラゴン、と小声で言いながら教科書のページを捲る。
最強生物科、非人科翼種類、ドラゴン。
種目にもよるが、おおよそAAランクと位置づけられていて到底喧嘩の
出来る相手ではないことが明らかだ。ひくり、と口元を引き攣らせながら
外見に合わない人だなと割と失礼なことを考えた。

「今、あの人に対抗出来るとしたらきっと不二先輩が一番有力候補です。
 でも、だからこそ、あるひとは不二先輩こそがあの絶対悪の僕だと
 言う人もある。彼自身もそれを否定しないものだから、余計に噂が
 助長を呼んで・・・・・」

「其処、何をしているの?」

パシッ、と電流が机に走り思わずのけぞった。
コツコツと足音が響き、其方を見れば表情一つ変えずに噂のその人は
立ちふさがる。

「僕の授業で、私語を許した記憶はないけれど?
 それとも記憶力が悪いの君は」

「確かに許された記憶もありませんけど、不二先生」

じろり、と此方も負けじと睨み返してやる。
・・・・・・・何となく。何となくだが、嫌いだこの人。
ハラハラと横で成行きを見守る壇をそっちのけで両者にらみ合うと
不二がおもむろな溜息を吐いた。

「放課後―――――明日の実験で必要な甲殻獣の角を捕ってきて
 貰うから実験室に来るように」













「本当に、本当に大丈夫なのリョーマ様!!」

「大丈夫だって・・・甲殻獣ってのも、別に凶暴な生き物じゃ
 ないんでしょ?」

「あ、あの、教科書にはレベルFって・・・書いてある」

「やっぱり僕たちも行きます!!」

「良いって、俺アイツムカつくし。ぎゃふんと言わせてやる」

死語を繰り出しながら、リョーマは放課後を待ってズンズンと
呼び出された準備室に足を進めている。
最初見たときは何処の深窓の美少年かと思う程に可憐(多分本人に
言ったら怒られる)で儚げ(確実に怒られる)な外見をした少年は
実は相当に気が短いほうであると理解した友人たちは、それ以上
彼を止める手立てを持たない。

「でも、不二先生って陰険〜!!リョーマ様を目の敵にしているって
 言うか。・・・・でもカッコいいわよねぇ、惜しいなぁ」

「朋ちゃん!!」

「何よ、皆そう思っているわよ。あのミステリアスな空気が
 堪らないってファンも多いんだから」

むう、と唇を尖らせる朋香に確かに綺麗な人だったとリョーマも
其処は同意する。同意したからと言って・・・・・ムカつくことに
変わりはないのだが。

「兎に角行ってくる!」

気をつけて〜という友人たちを置いて、駆け出していた。













無言のままで歩き続けること30分弱、学園内の広大な敷地の中、
その一角に森へと続く道がある。
実験材料をそろえるためと生徒たちの実践力を養うがため、そして
迷路のような道はある種防衛も兼ねているのだ。森は自然のままに
残されているがために、様々な動植物、或いは学園の理事長ですら
知りえないという多種多様な生態系がある。
ライティングで指先に灯火を浮かべて不二が森の入口を照らした。
放課後ともあり、茜空から次第に宵闇が濃くなっていく時間帯、
鬱蒼とした森の中は気味が悪い。

「・・・・・・甲殻獣は比較的森の入口に居る。
 凶暴な生き物じゃないから、ライティングで目くらましをした後
 角を折れば好い。くれぐれも個体を傷つけないように。
 何かあれば、呼んで」

「・・・・・・・俺に何かあった方が、アンタは良いんじゃないの?」

「何?」

「―――――何を隠しているんだか知らないけれど。
 アンタ」

「・・・・言ったでしょう?先生と呼べと」

「アンタ、俺に何を隠してる?」

最初から感じていた違和感がそれだ。
壇との授業中の会話だって、必要最低限の己の情報をわざと
知らせたのに深く踏み込んだ話は故意に避けられた気がする。
私語が駄目だというのならば、予めもっと早くに自分たちの話を
断ち切ることだって出来た筈だ。
暫しの間のあと、フ、と不二は笑った。

「君の両親―――――素晴らしい魔法使いだったという話はもう
 既に聞いたろう?此処の連中は噂話が大好きだ」

「・・・・俺の?」

不二の話の意図が分からない。
どうして両親の話に飛躍するのか?嫌な予感が脳裏を掠めて、
壇の話が頭を過ぎる。

『今、あの人に対抗出来るとしたらきっと不二先輩が一番有力候補です。
 でも、だからこそ、あるひとは不二先輩こそがあの絶対悪の僕だと
 言う人もある』

「・・・・・何が、言いたいんスか?」

「僕が、君の両親の最期を見た唯一の人間だとしたら?」

「な、に、!?」

「言葉の通りだよ、それが僕が隠している・・・」

「アンタ!!アンタが・・・?」

気がつくと、思いっきり掴みかかっていた。
不二の言葉が頭の中で何度も何度も反芻されて、反芻されているのに
その言葉の意味が分からない。どういうこと?どういうこと?
分かっていても、答えに辿り着く可能性を全て捨ててしまいたかった。
だって、それじゃあまるで―――――
ぐ、と引張る襟元に不二も顔を顰めるがそれも一瞬のことで

「う、あっ―――――ッ!!!」

一瞬後には弾き飛ばされる。背後にあった大木に体勢を立て直すことが
出来ずに強かにぶつかる。

「!越・・・・・・・っ」

「・・・・いて・・・・テテテっ」

しまった、とリョーマは思う。
両親の話に思いっきり動揺してしまって、避けることも受身を取ることも
出来なかった。いけない、やられる。
実力差は明らかだ、若し本当に彼が自分の両親の死に何かしら大きく
関わっているのだとしたらこの場でリョーマを生かしては
おかないだろう。
助けがくることも考えられない。

(万事窮す―――かな・・・・)

口の中を切ったらしい、チッと舌打ちすると血液の入り混じった唾を
吐き捨てる。だが、意外なことに不二はくるりと踵を返した。

「・・・・・今日はもう帰りなよ。
 実験材料はまた後日、次の授業までに」

「・・・・・・・・・・へ?」
















ハロウィンに向けての魔法モノ。御覧のとおり(?)ハリポタ世界観ですが
一読しただけなので詳細設定は自己流です。
ハリポタはドラコ一押しですが何か?
うちの小説は感覚で読むべしといった良い例だと思います。
ところでどうでも良い設定を出しすぎて長くなりましたので、続きますが
良かったらお付き合いください。
因みに先輩の年齢は22くらいの心算〜原作より年の差これはこれで萌。




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