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Love is without reason









何時だって、口実を考えている。

秋らしい空気が漂いだした帰り道、日が暮れるのは
とても早く部活を終え帰路に着くときには既に夕日さえ
ビルの隙間に消えそうだった。
自分と殆んど帰路が異なるにも関わらず、不二は頑なに
リョーマを送っていくと言ってきかない。
普段たおやかに見える彼の芯の強さは、今までの
付き合いの中で嫌というほど実感していたから、
甘んじてその申し出を受け入れた。特に、害があると
いうわけでもないのだ。―――――少しばかり、心臓に
宜しくないという位で。
互いに共通の話題を手探りで話しつづけて、それすらも
尽きてしまえばお互い取り止めの無い日常を話す。
これでも気を使ってくれているのか、凡そ不二が
話を振りそれにリョーマが乗るといった有り様だ。
それでも、緊張するのに変わりはなかった。
何で、こうも唯二人でいるだけなのに心臓が跳ねる
のか分からない。分からないけれど、まるで見当が
付かぬわけではなく、恐らくは逃げているばかりである
ことにはリョーマとて気付いていた。
だからこその、緊張である。

好きだ、と言われたのは丁度一週間前で。
それから、毎日不二はリョーマをこうして帰宅するまで
送っていく。返事は何時でも良いと笑いながらも、
急かされているような気がしてならないのは、
自分の中に罪悪感があるからだ。
一週間も、こんな関係を続けているのには訳があって
好きか嫌いかで訊かれれば好きだけど、それはライクの
方だと思って居た。信じていた。
きっと、つい今し方迄。
黄昏時に此方を見て、本当に何か大切なものを見る
ような眸で笑う不二に、不覚にもその盾が崩れた。
あんな顔をする彼は、見たことが無い。
本心を言えば、何処かでからかわれているのではないか
と彼を疑った自分を責めた。何時だって、その言葉は
真実からくるものばかりで逃げる事を前提に真っ向から
相手を見ようとしなかった自分は、一体どれほど彼を
傷つけたであろうか。計り知れない。

(今更―――――――)

都合が好過ぎるのではないか。と思う。
是ほど自分勝手に振舞っておいて、今更俺も好きです
なんて都合が好過ぎるのではないか。

「先輩」

「何?」

「その・・・・返事は」

訊ねると、不二は困ったように酷く曖昧に笑った。
それから、くしゃりとリョーマの黒髪を撫でて、
焦らなくて良いよと言う。

「何時も、無理にこういう形をとって御免ね。
 ただ、僕達が部活動以外に一緒に居る機会って
 あまり無いから。君に少しでも僕を知って欲しいし
 君のことをもっと知りたいんだ。
 なんて、都合が好いかな。紛れも無くこれは僕の
 戦略だよ。君を手に入れたいと何時も思っている」

――――――嗚呼。
そうか。
この人の、こういうところが「好き」なんだ。

ズルイのは此方の方だと思うと、鼻の奥がツンとなった。
何時も彼の純情を踏み躙って、それではぐらかそうと
している。答なんて、わかりきっている。
だけれど、それは都合が好すぎやしないか?
夜の気配を孕んだ風が辺りを掠める。
奪われる体温に、便乗してそっと、そっと手を
絡めた。驚いた風の不二がリョーマを見るけれど、
それでもリョーマの視線は前を見据えたままだ。

「手が、冷たいから。こうしていて良い?これから、
 だって冬になるし」

「冬が終われば、春が来るよ。
 そうしたら、如何するの」

「春は眠たくなるから、傍に寄掛かれる誰かが居ると
 良い」

「夏には」

「夏は、暑いから。先輩の、影がきっと心地好い」

「また、秋が来るね」

「秋は、きっと物悲しくて人肌が欲しくなる」

「――――――――――うん、傍に居るよ」

重ねた掌は、不二の方が幾分か冷たくて口実が
口実として通じないことに少しだけ照れた。
何時か、仮令何の理由が無くても互いが互いを
求められたら良いと思う。そんな日が来るまで、
こうして傍に居る口実を探りながら彼と居るのも
好いと思う。それすら、口実に過ぎないと何処かで
苦笑した。












必死で不二先輩の傍に居る理由を考えようとする王子は
可愛いと思う。先輩は勿論何もかもお見通しで、
毎日王子を送ってあげているのです。不二先輩は灰色推奨。



















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