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ringing-ringing




「今日ってクリスマスだろ、俺様の家で一寸した
 ホームパーティーを催すんだが、お前も来いよ」

来ないか、でなくて来いよ。命令形かよとリョーマは内心で
舌打ちしたがホームパーティーという
アメリカで生活していたとき以来の懐かしい響きと、
お前の誕生日プレゼントも用意してるんだが、と言う跡部の
言葉にそれ以上文句も吐けず、珍しく二つ返事で頷いた。





そのことを彼は今後悔している。
後悔どころでなく、大後悔している。
何でもっと考えてから返事をしなかったのだろう。
彼らは俗に言う恋人同士の間柄で、にも関わらず実はリョーマは
跡部の家に行ったことが無かった。
放課後なんかは、大概ファーストフード店で待ち合わせるし
――跡部としては、学校に迎えに行っても良いのだが、1度それを
実行したときにひどい騒ぎになってリョーマに怒られたことがある。
リョーマも最初のうちは自分が跡部を迎えに行っても良いと
言ったのだが、何故か校門で矢鱈に人に声を掛けられるので跡部が
猛反対をした、と言う経緯があるのだ――
休日にはリョーマの家に跡部が車で迎えに来ることが殆んどだ。
付き合いを重ねて、未だそれ程時間が経っていないこともあり
リョーマは彼にしては珍しく念入りに、粗相のないように
気を配って家に向かった。
ホームパーティーということは、
つまり彼の両親が居るということだ。
自分のことを何と紹介するつもりかは知らないが、
失礼のないようにしなければ、と一寸緊張した。
手土産も持って、ラフすぎず華美にならない程度の服に
ジャケットを羽織り、家を出る。
跡部のことも、ちゃんと景吾サンって呼ばなければ。

「試合より、緊張させんなっての」

一人、愚痴りながらも路に着いた彼の顔は、心なしか
緩んでいた。

家は直ぐに分かった。
家というには、些か語弊があるように思われる。
屋敷・・・否、城・・・否、宮殿??
幾ら探しても跡部と表札の掲げられた家に行当らなかった
リョーマが、近くを散歩していた人に聞くと直ぐに其処は
分かった。行き掛けに通り過ぎてきたのだが、何かの施設かと
思っていたやたらに敷地の広い建物が、そうだったのだ。
彼の立ち振る舞いや言動やらから、そりゃあ普通の家に
住んでるなんて微塵も思っていなかったけれど。
寧ろ、普通の家に住んでいたら、其方の方が可笑しい気も
するけれど。

これは、流石に驚くほか無かった。
よく、芸能人の御宅拝見とかやっているけれど正にあれを
凌ぐのでないだろうか。日本より遥かに家の規模の大きい街に
住んでいた彼をしてさえ、呆然とせしめる。

在り得ない。

てか、まさかこんないかにもな趣味の豪邸に住んでいる奴が
自分の身近にいて、しかも恋人だと思うと少しばかり頭痛がする。
はるか彼方に見える、何処かの世界的に有名なスポーツ選手が
住んでいそうな洋式の城のような建物に眩暈も催しそうだった。
何で、此処で引き返さなかったのだろうと思うけれど
多分怖いもの見たさも手伝ってリョーマは呼び出し鈴らしき
ものに手を掛ける。それは、多分警備室やら何やらに
繋がっているに違いなくて、この寒空の下カチカチと歯を
震わせながらセキュリティー万全の屋敷の外で、暫し
待ちぼうけを喰らった彼が跡部に心の中でかなりの罵言を
吐いていた頃、漸く扉が開かれた。

「悪い、待たせたな」

厭味な位似合う黒のタキシードを着込んだ跡部の姿に、
思わず罵声を浴びせるのも忘れて眉を寄せた。



「全く、警備の奴も仕方ねえよな。俺様の恋人の顔くらい
 覚えとけよ、ったく。おい、見ろよ。あの白馬が俺の愛馬の
 エリザベータだ、どうだ?最高だろ。
 普通の奴は絶対に乗せないんだが、
 お前がどうしてもっていうなら 、お前だけ特別に乗せて
 やってもイイぜ?ああ?何なら、お前にも飼ってやるよ。
 今度二人で、牧場に乗馬でもしに行くか?いいぜ、乗馬は」

「や・・・取り合えず、見返りが俺の身体とかになりそう
 なんで、遠慮しときマス。・・・てかさ、ケーゴ」

「あん?」

「何で、アンタ、タキシードとか着てるんだよ。
 何かの余興?」

「何だよ、その余興っていうのは!ホームパーティーって
 言っただろう?お前こそ、何普段着着てるんだ」

「だって、ホームパーティーだろ」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

おかしい。
どう考えても、話が通じない。
お互いの描いているホームパーティーに何か決定的な違いが
あることを薄薄感じ取りはじめた時に、漸く屋敷に
到達した。中から、微かながら音楽が聴こえる。

「丁度、ダンスタイムか。なら、余り人に挨拶も
しなくて済むな。今が、チャンスだぜ?入れよ」

 「ちょ・・・!」

ダンスタイム!?ダンスタイムって言ったよ、この人!!
如何云うことだ、と混乱する頭で考えるリョーマが、跡部に
引っ張られて重い扉を開くと。
ホールらしき処に、敷詰められた鮮やかな赤色の絨毯。
生で演奏する音楽家達。
色鮮やかな熱帯魚みたいなドレスを身に纏う、殆んど異国の
女性たち。それをエスコートする跡部と同様のタキシードを
着込んだこれまた異国籍と思わしき、ゴールドやブラウンの
髪の毛をした男性人。TV、或いは映画で見知った顔を
見た気がするのは多分・・・気のせいなんかではない筈だ。
ちらほら見る日本人の顔も、どうやら政治家などと見て取れる
空気を醸し出していた。傍には、和洋中様々な料理と葡萄酒や
果実酒の数々。そして控える使用人らしき人影。
頭上にはクリスタル硝子細工の、年代物のシャンデリア。
外国映画で、テロリストやら何やらに襲撃されそうな構図
だなあ、と現実逃避気味の頭で思った。
嗚呼、矢張り帰ればよかったのだ。
約束なんて、反故にしてでも。
何でこの人は、俺を困らせるのがこうも天才的に
上手いのだろう。いや、俺でなくとも困るよね。
これは困るよね。氷帝のチームメイトの皆とか、
ああ能天気そうに見えて苦労しているのだろうなあ。
同情するよ、今度会ったら労いの言葉の一つや二つ
掛けてあげよう。そうしよう。

「おい、何ボーっとしているんだよ」

「・・・コレの何処がホームパーティーなんだよ!」

「ホームパティーだろうが!お前の家はしないのか!? 
 お前帰国子女だろ」

ホームパーティーに謝れ、アンタ!何いけしゃあしゃあと
 ふざけたことぬかしてやがる!何処の外国の城だ此処は!」

俺、無茶苦茶浮いてるぢゃん!俺が一番マトモな恰好の筈なのに!
最初ッから、礼服着て来いっていえよ!
言われても、タキシードなんか無いけど!
ああ、もう!畜生!
何から文句を言うべきなのか、或いは何から突っ込むべきなのか
混乱してリョーマがそれでも小さく叫ぶと、例の如くパチン、と
跡部がこれ見よがしに指を鳴らした。
直ぐに、メイドらしき恰好の女性がその場に駆けつける。

「お呼びですか?」

「ああ、コイツをこの場に相応しい恰好にしてくれ。
 言っとくが、俺の恋人だからな。丁寧に扱えよ?
確か、行きつけの店があるだろう?其処に電話して
コイツのサイズに合う服を幾らか寄越して貰え。
金は幾らでも良い。但し、急がせろ。いいな」

「畏まりました、皆手伝って」

彼女が言うと。近くに居た使用人が集まってくる。
呆気に取られて固まったリョーマの耳元に唇を寄せると

「良かったな」

跡部が囁いた。







その後、やたらに大きな荷物を抱えたお兄さんが来たかと
思うと雪崩るような数の服を目の前に広げられて、
メイドのお姉さん方が嬉々としてそれを選びになって。
「幾つ?」だの「肌超綺麗―!羨ましいー」だの
「可愛いってよく言われない?」だのまるで女子中高生の
ようにキャピキャピ騒がれて、その後服に合わせて髪とか
ワックス付けたり弄られて。

「へえ・・・中々可愛いぜ?」

何てケーゴからはお褒めの言葉を頂戴したわけだけど。

「俺の服、何で女物なのさ」

「細かいこと気にすんなよ」

気にするわ。思いっきり気にするところです、ソレ。
一寸真剣に今後の跡部との付き合いに対して考えようと
思いはじめたリョーマの現在の格好といえば、胸のやや開いた
チョコレイト色のワンピイス。
アクセントのように小さな小豆色のドットが入っている、に
ふわり、と掛けられた白い雪のようなストール。
御丁寧にローヒールの華奢なラウンドトゥパンプスまで
揃えられえて胸元にはシルバークロスの小さなネックレス。
何処から見ても、完璧な美少女にしか見えない出来上がりに
跡部は至極満足そうに笑みを浮かべた。
普段は勿論スニーカーや運動靴で慣れている足元は、俄かに
パンプスを履かされたおかげで、覚束無い。
サイズは合っている筈なのに、履き心地悪そうに足を引き摺る
彼の手を取り、エスコートした。
その姿が様になっていることと云ったら無かったけれど、
もうコレは明らかな女の子扱いである。
てめえ、大概にしとけよ・・・!
これでもかなり大目に見て、かなり頑張った方だが
好い加減堪忍袋の緒が切れたリョーマが、ぐっと握る拳に
力を込めて頭に血が上った割には的確に、鳩尾狙いでパンチを
繰り出したとき

「景吾さん」

声は、掛かった。

見ると、如何にも上流階級の夫婦らしき男女が二人の前に
立っている。女性は、黒のシックなドレスに合わせたストールを
羽織り、男性は濃茶のエスコートスーツをそつなく着こなしている。
些か成金趣味の時計が垣間見えるが、
それ以外目立って気になるところは無い。
只、此方を向いて笑みを作る女性の、そのやや高慢そうな
整った顔にリョーマは誰かを彷彿として、凍りついた。
その途端に、跡部も些か驚いたように声をあげた。

「父上、母上!」

―――やっぱりか!!
ドンピシャ正解かよ!
ケーゴ、お母さん似なんだ!
美人だけど、その顔で笑われると背筋が寒くなるよ!<酷い。
再び混乱の渦中に佇むリョーマを無視して、
親子の会話は弾んでいく。

「急に居なくなるから、心配したのよ」

「申し訳ありません。一寸、人を呼びに行っていたもので」

「ああ、ならばその子がお前の恋人かな?」

それまで放心していたリョーマが思わずビクッと肩を揺らす。
そうだ、こんなコトで挫けている場合でなくて。
兎に角、最初のイメージが大切なのだし挨拶くらいまともに
出来ないと!
気を取り直して、対外向け100%営業スマイルを顔に貼り付かせて
声のトーンを上げる。

「初めまして・・・ケーゴさんにはいつもお世話になっております」

凄い、やれば出来るぢゃんオレ!
と喜んだのも束の間だった。

「まあ、何て可愛い御嬢さん!
 景吾さん、此方何と仰る方?」






・・・御嬢さん???
おい、と目で訴えるリョーマを見遣って跡部は
小さく黙っていろと合図した。

「あー、否、こい・・此方は越前リョーマと言って男なのです」

「え・・・でも、先程貴方恋人って」

「恋人ですよ、勿論。こういう恰好をして貰ったのも  其方の方が対外的には受け容れられるかと思ってのことですが
 父上と母上には本当のことを打ち明けておこうかと・・・
 何せ、将来を誓い合った中ですから」

誓い合ってないから!
不二顔負けのスマイルでつらつらと両親に嘘を吐く跡部に
寒気がしながら、それでも心の中で突っ込んだ。
まあ、と言いながら母親は口元を手で覆った。
本当にとんでもないことするよ、この人は。
そりゃあ、吃驚だろうよ親としては。
行き成り会わされた息子の恋人が、男だったら吃驚だろうよ。
俺は別に、差別とか偏見の意識とか持っていないんだけど
やっぱり引くよなー、どうしよっかなー。
イチかバチかの懸けに出たもんだ、とリョーマが少し感心した
ところで、やっぱり跡部の親は普通でなかった。

「ぢゃあ、入籍は無理かしら。でも、法律も変わってきているし
 何なら私が知り合いの先生に頼んでみましょうかね」

「そんなことをしなくとも、養子縁組をしたら此方の籍に
 移って貰えるぢゃないか」

「やだ、貴方。それでは、恋人同士らしくないでしょう?」

乙女心が分かって居ないわね、と呟く彼女にいや、俺男だしと
何だか場違いなことしか言えなかった。

嗚呼。
そうか。
この親にして、この子ありだ。
何でこの人の親と言う時点で、マトモな人間で無いということに
気付かなかったのだろう。マトモな親に育てられた子供が、
こんな俺様何様な人間に育つわけ無いぢゃないか。
リョーマはちょっぴり賢くなった。

「ぢゃあ、景吾さん。今日は、その子の御披露目?」

「そのつもりです。俺としても、これから先彼以外に伴侶を
 得ることなど考えられないし、彼もその積もりのようなので
 それならば成るべく早くに、社交界にも慣れて貰いたいと
 思いまして。何せ、これから跡部を継ぐ俺の恋人ですし」

「よく言った、景吾!」

「偉いわ、景吾さん。リョーマさん、これからも
 この子を支えてやってくださいね」

そんな重たいものを支えきれるだけの力など俺にはありません。
丁重にお断りしたかったけれど、どうもそういう空気で
なかったので顔を引き攣らせながら、曖昧に頷いた。

それを良いことに、何故かその後ダンスを終えた会場に
日本語・英語・フランス語・イタリア語・中国語・朝鮮語・
ドイツ語エトセトラエトセトラ数カ国後のアナウンスが流れ、
日本語が小難しくてあまり聞き取れなかったリョーマだが
英語のそれを聞いたときには、跡部がグラスに注いでくれた
ファンタを思いっきり噴出す手前だった。
『只今から、息子とその恋人の婚約御披露目を致します』
大部分省略して、そのような内容の放送だ。
だから、如何してこうもアンタの血族は人の都合を聞かないんだ? 憮然とした彼が、只管にぎこちなく笑いつづけて
並居る人の祝辞から解放されたときには、
既に夜の11時を回っていた。
遅いから、泊まっていけよという跡部の言葉に甘えて、
今寝室に居る。豪華絢爛な西洋アンティークの寝具や天蓋付きの
ベッドを見ても、もう動じない自分が少し可哀相になってきた。
勿論ドレスは一番に脱ぎ捨てて、マトモな寝間着を出せと
言い寄ったら漸く普通の形の服が出てきてほっと一息吐く。
それでも、生地がやたらに高級感溢れているとかはもうこの際
気にしたら負けだ。
ふかふかのベッドに弾むように寝転がり、毛布に丸まると
部屋の重厚な木製のドアのくすんだ黄金色のノブが廻り、
遅めのシャワーを浴びた跡部が帰ってきていた。

「何、景気の悪い顔しているんだよお前」

「疲れてんだよ、見て判らない?」

「人込みに酔ったか?」

「・・・・まあ、強ち外れでもないかな」

傍らに寄り添うように腰掛けると、跡部はそのまま彼を
引寄せるように抱きすくめる。
いつもの香水の馨がして、漸く安堵したみたいに
リョーマは軽く眸を臥せた。

「俺、アンタの生活に付いて行ける自信がこれっぽっちも
 ないんだけど」

「慣れるさ、その内嫌でも」

「慣れなかったら、別れる?」

「何馬鹿言ってるんだ。慣れなかったら、家を出ても良い。
 捨てても構わねえ。お前と、何処かで暮らす」

身体を預ける形で、床に倒されて跡部を見上げる形になった
リョーマは本日最高の微笑を浮かべて、
ならば赦す、と首に手を回した。


「ホラ、お前の誕生日プレゼントってやつだ」

未だ肌蹴たバスローブを、直しながら手渡される。
クリスマスジーズンだからだろうか、銀色の包装紙に
赤と緑のリボンで包まれた小さな箱に、
思わずきょとんとした。促されて、中を開けると
そのまた中に黒色の箱が入っている。
蓋を上下にずらすと、細いシルバーの指輪が添えられていた。

「何のつもり」

「プロポーズ」

未だ言うか、この男。
半ば呆れながらも、軽い言葉に不釣合いに、
跡部が頬を微かに染めたのを見て取って

「不束者ですが、宜しくhoney」

遠い未来の、確かな約束を交わした。











ギャグなのか甘いのか判らないYO!
ギャグだと収集がつかなくなりそうなので路線変更です。
跡部様はママ似希望★オリキャラ満載で御免。
跡部様は、何となく両親にも距離置いてそうだよね。
そんなワケで敬語にしてみたけれど思いのほか似合わなかった。
王子ハピバ☆幸せにね☆






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