七夕伝説を聞くなり、跡部は一言馬鹿らしい、と言い捨てた。 「んなもん、真に受ける奴がわりぃんだよ。 いつだって、会いに行けばイイじゃねぇか」 少しも尤もじゃない言い分に、微かな頭痛を覚える。 そんな簡単なものならば、織姫も彦星も苦労したりしやしない。 「河があるんだよ、だって。天の川、ミルキーウェイ。 深くて、澄んだ河。 無理じゃん、そんなの」 「なら、泳げ。それくらいの甲斐性がねぇから、 駄目なんだ彼奴は」 「彼奴って…友達みたいに言うなよ」 「俺だったら」 唇に、指を這わせて輪郭をなぞると小さな身体が震えた。 柔らかくて、赤く彩られたそれは真実果実みたいだ。 音を立てて、密やかな劣情が次第にこの身を支配して いくことなどリョーマは恐らく考えてもいないだろうと 少しだけ自嘲気味に笑う。 「リョーマ、オマエに会えない方が無理だ。 気が、狂っちまう」 台詞は明らかな口説き文句だ。 ともすれば歯の浮きそうな戯言すらも、彼の口から零れる それだけで随分と印象が変わる。 その言葉の真偽を疑うなんて、それこそ野暮だ。 1年に1度の逢瀬の約束よりも、ずっとこの体温を信じたい。 |
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