「神様なんて、信じて居ないくせに それに託つけてこういう行為には及ぶんだ」 「何、不満?」 「イヤ、背徳的でなかなか素敵ぢゃないっスか」 俺は、嫌いでないよ。 先輩のそういうシタタカなところは、なんて正しく傾城の笑みで リョーマは言った。 確かに、少しばかりどうかと思う。 仮令、世間の恋人たちがムードに流されていたって。 仮令、幾ら彼の誕生日だからって。 聖なる日に、叛く行為に目が眩む。 部屋に転がるシャンパンに、食べかけのケーキの甘い馨り。 雰囲気が出るからと買い足したキャンドルに火を燈して、 クリスマスソングなんかを流してみたり。 プレゼントは、2個と1個。 リョーマは一緒で構わないと言ったのに、不二はマメに彼の誕生日用と クリスマス用に二つプレゼントを用意していた。 無論、この男が見返りを求めない筈は無い。 実用性を図ったスポーツタオルをプレゼントしたリョーマは、 自分に宛てられた少し大きめの手袋と、 欲しがっていた洋樂のCDアルバム(とうに絶版になっているやつだ)を 受け取ると、まるでそれが当然であるかのごとく 自ら頬に接吻た。 「越前って、クリスチャン?」 微かな灯りを頼りに、手近にあった飲料を引寄せて唇を潤しながら 問う。帰国子女だと聞いて、直ぐにそう結びつけるのは思慮に欠ける 気がしないでもないが、恐らく正しい一般論だろう。 「そう、見えます?」 「うーん、見えない」 君って、基本的に自分のこと以外何も信じていない気がするから。 と即座に応えると、酷いっすよ、それ。と、しかし然して堪えていない 様子で笑った。先輩だって、そうぢゃん。 「僕は、君は信じているよ。何せ、君はこの世界における 僕の神だものね」 「何それ」 「ねえ、越前は?」 「クリスチャンなら、アンタとセックスとかしてませんよ」 こんな、非生産的な行為は駄目でしょう。 先ず、間違いなくバレたら破門とかぢゃないの?なんて僅かに 身を寄せた。 「彼の人は、救うのかな?こんな、背徳的な人間でも」 「彼の人を、信じていないオレとアンタでも」 「無神論を唱える人でも。異教徒でも」 「人殺しでも、犯罪者でも。アンタを愛するオレでさえも」 唐突な、闇に紛れて尚艶やかな唇を突いて出た思いがけない 告白に、瞬間不二は目を見開くも、その後直ぐに目を細めて 苦笑した。 「僕は、赦すね。そして、救うよ」 「それで、充分ッス」 オレの世界の大半って、先輩だから。 耳元で告げられる言葉は、確かに聖なる響きは持っていないけれど それでいい。 それでいいと思う。 今日は、少しだけ饒舌なリョーマの細い肩を抱き 若しも、この行為が背徳で救われないとしても護るから、と思った。 護るから。君だけは。 どんな卑怯な手を使ったって。 どんな悪事に手を染めてでも。 それは、彼の人には出来ないことで。 それは、きっと自分にしか出来ないことで。 そして誰に赦されなくとも、神に赦されなくとも 彼が笑ってくれればそれで、充分だと思った。 傍らで、既に小さな寝息が聞こえる。 眠りを妨げないように、細心の注意を払って額に接吻し 大きく息を吐き、目を閉じる。 光が、瞼の裏で弾ける心地した。 いや、別に神様を否定したいわけでなく。 居たら良いなあとは思うのですが、居たらもう少し救われても良い人が 居る筈だとも思う。難しい問題です。果たして異教徒は救われるのかな。 不二先輩は、王子しか信じていなくて 王子は自分を信じていて、そんな危さが好きだ。 あ、タイトルはCOCCOの曲より。素敵だな、と。 |
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