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Sink in you









ブランドのロゴ入りの袋を開けると、薄いが温かい
ハイネックのセーターに黒い細身のパンツ、リアルファーが
ふわりと揺れるロングコートが箱に詰まっていた。
着るように促されて、リョーマが袖を通すと誂えたように
ぴたりと馴染んで、そういえば身体のサイズなんて疾うに
熟知していて当然か、なんて思う。
ワックスやムースで適当に髪を弄られた後に、同じように
一部の隙もない正装をした男に連れられて、彼の家の
所有する高級車に乗り込み、そのまま目的地に向かう。

繁華街の大通りは流石クリスマスイブというべきか、大勢の
カップルが目に付いて自分たちも並べばあんなふうに見える
のだろうか?と不図考えてしまった。





目の覚めるような、赤い絨毯。
煌びやかなジャンでリア、恭しく傅くフロントマン。
まるで何処かの童話から抜け出してきたような装丁のホテル。
エレベーターに乗って、高層ビルを駆け上れば夜景の開けた
レストランがそこにあった。クリスマスだというのに、
込み入っていない店内に首を捻ると跡部は貸切だと笑った。
オーナーらしい外国人の男性が出てきて、
取り合えず英語ではない、リョーマには聞き取れない言葉を
跡部と幾らか交わすと窓際の席に案内される。
テーブルの上には、硝子の器に所狭しと薔薇の花が
生けられていて、蝋燭の薄い光源が微かに辺りを包み込んだ。
作り物でないそれは、ひどく柔らかな色彩と光を放つ。
初めに跡部は飲み物を頼んだらしい。
用意されたグラスには色鮮やかな液体が、泡を時折放って
揺れる。

「お酒?」

「まさか。俺ならば未だしもお前みたいなガキのうちに
 酒を飲むつもりかよ。これは、果実水をソーダで割った
 だけの物だから、安心して飲め」

たった二つしか変わらないじゃん、とぼやきつつも
揺れるルビー色の液体を繁々と眺めて
つまりは、ファンタみたいなものかと思う。
そんなことを言えば、一緒にするなと怒られるかもしれないけれど。
乾杯、と傾けて口を付けると気泡が口内でぱちん、と弾けた。
続いて前菜から始まって、コース料理が運ばれる。
そういえば、ナイフとフォークの使い方って礼儀だか作法だか
ルールがあったことを思い出し、跡部に倣って食べようかと
リョーマが思案すると跡部は箸を用意させた。

「下らないことで、悩んでたら折角のものも楽しめないぜ?」

「・・・ども」

―――――――――正論だ。
だが、何処と無く悔しいと思った負けず嫌いの彼は、今度
このような機会がある前には従姉弟にでも聞いて、しっかりと
学習してこよう、等と密やかな決意を胸に固める。
街中が色づいて、夜空の星を隠す位に輝いて、それをこんな
高い場所から見下ろすなんて何だか不思議な気持ちだった。

「景吾さぁ、俺にこんな贅沢させて良いの?」

唐突な質問に、跡部が何をだよと問い返す。

「アンタだよ。俺って、至れり尽くせりじゃん。そりゃあ、
 ・・・大切にされてるって分かるのは嬉しいんだけれど」

言ってから、グラスを一気に呷る。
一瞬だけ目を丸くした跡部は、直ぐに口元を歪めて笑った。
構わないんだ、と。

「お前にならば、幾らだって贅沢させてやるよ。
 お前が望むならば、何だって叶えてやる。
 昔、たった一人の女のために滅びた国があると言うが、
 それ位盲目で良いんだよ。恋って奴は。
 好きなヤツが手に入るならば、良いじゃねえか。
 全財産投げ捨てようが、国一つ滅びようが。
 お前はその分、俺から逃げられなくなるだろう?
 ・・・・・それで良いんだ」

「――――――狂ってる」

「それが如何した」

ゆらり、と揺れる焔に青年の狂気が滲む。
だけれど、それを綺麗だと思う自分が居ることに
リョーマは気付いてしまった。
それを、心地よいと思う自分が居ることに。

濃厚なステーキソースが咽喉に絡んで、継ぎ足された
グラスの果実ソーダを飲むけれどこの焦燥は拭えない。
若しも自分がこの世界全てを欲したならば、この男は
世界中の全てを掻っ攫ってくるのだろうか。
世界中の全てを壊してしまうのだろうか。
それとも、二人きりで。
何処までも行くのだろうか。
分からない。分からないけれど。

「俺は、景吾が欲しい」

銀色のフォークが、ぴたりと動きを止める。

「俺は、アンタが居ればそれで良いよ。
 全部、それだけで満ち足りる」

退屈をしない日々も、
平穏な毎日も、
嘘みたいに甘い言葉も、
息をも奪うような恋情も、全て。


優しく目を細めて、狂っている、と呟いた男に
それが如何したの、と返した。













クリスマスだから、甘いお話に・・・・したつもりだったの。
何でこう、私が書くと二人ともアレなんだろう。
若しこれを読んでいる方がリアルタイムで読んでて、イブの
予定が空いていても大丈夫!!私もリアルタイムでほぼ
書いているから★☆・・・・良いもん、別に。
まあ何はともあれ、メリークリスマス★☆



















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