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Smoking smooch






独特の煙い馨りが鼻をついて辺りに広がる。
目の前の男はこんな状況にもかかわらず、
いつもと同じ底の見えないような微笑を浮かべて息を吐いた。


コホンと一つ咳払いをしてリョーマは不二を見遣った後
「身体に悪いよ」と事も無げに言った。
緩慢な仕草で煙草を口元へ運んだ不二は、
すう、とその煙を吸い込み
慣れた仕草で吐き出す。

「知っているよ。どう?越前も一本吸う?」

リョーマは無言で首を左右に振る。

「部長の次くらいに意外だね。不二先輩と煙草って
 何か結びつかない」

「誉め言葉と受け取っておくよ」


全然悪びれた様子も垣間見せない彼に、嗚呼最初から
自分に気付かれるのを承知の上で吸っていたのか、と
リョーマは内心盛大に溜息を吐いた。
――――度胸あると云うか、それとも単に無鉄砲なのか。
或いは単純に暴かれても構わないというのか。
不二の意図がまるで読み取れずに、困惑する。

彼の居る用具入れの一角は、人が確かに中々来ないとは言え
今の自分みたいに何時、運動部の人間が
来てもおかしくない場所だ。
沢山の疑問を投げかけたかったけれども、
どれも上手くはぐらかされる気がして問うことが出来ない。
リョーマは結局、如何してと聞くことが精一杯だった。

「この年頃ならば、興味あっても当然だと思わない?
 一寸した関心だけで幾らでも冒険を出来る年代だからね、
 今の僕たちは」

「アンタは、そんな直感だけで動くようなヘマしないと
 俺は思うケレド?昨日今日吸いだしたんぢゃないでしょ?
 その様子ぢゃあ」

その台詞に不二は意外そうに大きく目を見開いて、
バレバレ?と素直な笑い方をした。
いつものアルカイックスマイルでなく、初めて覗かせた素顔に
リョーマはどきり、と不意討を喰らった心持ちになる。
いつもそうやって笑えば良いのに、と思ったけれど
自分だけが覗いたその笑顔を人に見せるのは何だか口惜しくて
黙っておいた。

「僕の方こそ、意外だよ」

リョーマとの距離を近づけつつ、不二が言う。

「何が」

「越前。君って、他人の事に興味なさそうな感じだったから。
 例えば、僕が煙草を吸っているのを見ても何も関心を寄せない
 気がしていたんだ。―――――でも、結果君は僕に注意をして
 しかも僕の本質を見破ったでしょう」

先刻の昨日今日煙草を吸い始めたのではないと云ったことか、と
伸ばされてくる手を見詰つつ思う。
そんなの、気付いてたよと小さく言った。

「先輩、煙草の馨がしてたもの」

「・・・消したつもりだったのに、良く判ったね」

「そりゃあ、先輩だからね」

如何云う意味、と今度は不二が聞いた。
リョーマは曖昧に笑うだけだ。
いつも、不二がしているかのように。
成る程ね、と低く頷く。
掠め取るように頬に触れるか否かの処で、躊躇したみたいに
不二は手を止めた。

「この事を、誰かに告げたりする?」

リョーマはその零れ落ちそうな大きな眸をゆっくりと臥せる。
いいえ、と紡ぐ声はすっきりと響いた。

「自滅するアンタなんて、見たくないですから」

俺の手で正々堂々と倒したいからね、と言えば
面白い話だと不二が返した。

一度、視線が衝突して。
それから、二人して目を逸らした。
そうして、もう一度。
次に触れたのは、煙草の味で。


息継ぎの合間に、肺に無理を通して送られる煙に
咽て咳をしたあとリョーマはやっぱり、身体に良くないと呟く。

「口淋しくなくなったら、止めるよ」

花を散らすようなかんばせで微笑む不二は、いつものアルカイック
スマイルで自分の唇を指した。








黒不二リョ???つまり止めて欲しかったらキスしろって
いう訳です(態々解説しなくとも・・・)





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