21グラムだそうです、と君が言い出した。 僕の部屋には西日が差し込んで、丁度光源のない室内は 非日常の空間のように赤く染められていく。それに触発されてか、 いつもながらまるで脈絡の無い物言いだった。 「その話ならば知っているよ。魂の重さだと一般に言われているよね」 「先輩が好きだと言うのは、俺のこと?」 「他の誰でもない、君のことだよ越前」 「俺の、身体のこと?精神のこと?魂のこと?」 「君の、身体のこと。精神のこと。魂のこと」 君の台詞を反復する僕に、一瞬だけ怪訝な表情を覗かせたけれど 直ぐにその指すところを意味を察したのか、頬を薔薇色に紅潮させた。 君の分かりやすさも、僕の惹かれてやまない一つの要素だった。 「俺が死んだら、先輩は」 「きっと、泣くよ」 「それは、如何して?俺の身体のため?精神のため?魂のため?」 まるで幼子が繰り返す問答みたいなことを突如として君は聞いてくる。 僕はそれに頭を抱えて、下手をすれば次の日、その次の日といった具合に 答えを探して考え込む。漸く答えを見つけたころには、仮令君の興味が 他に移っていたとしても、だ。 「俺はね、生まれ変わりを信じない」 いつになく、真摯な声が部屋に響いた。 けれど、と前置きして次に言う言葉を探るように小さく唇を動かす。 「アンタを構成する全てが、俺の惹かれたものだということは分かるよ。 だから、譬えばそれらが欠けてしまうというのならば 愚かだと言われても、きっと探そうとするんだと思う。 アンタの欠片を、散らばってしまった欠片を探そうと躍起になると思う」 僕の全てを揺さぶる言葉を簡単に紡ぎ、君は21グラムと再び繰り返した。 21グラム、スーパーで売られている惣菜の単位ですら100グラム単位であり、 学校の理科室に埋もれているような余程緻密な計量道具で無い限り 見落としてしまう些細な、微細な、恐らくは一瞬で消えてしまったとしても 気に留めないであろう単位。 僕の見つめる先に居る君、その美しい器に収められた中核、陶磁器の肌、 柔らかな筋、脈打つ血液、珊瑚色の臓器、それらの下に息衝くものを 魂と呼ぶのであれば。 21グラム、たったそれっぽっちの重みだ。 21グラムこの地球上から消失したところで何も変わりはしないし、 世界はきっと動き続けることを已めないけれど。 「俺が21グラム欠けてしまったら?」 悪戯な眼差しを、否定するみたいに冷たい掌で塞いだ僕は その貝殻のような瞼に接吻ける。 「世界を、止めてしまおう」 君は、確かに僕の世界なのだ。 魂の重みだそうで。真偽はさておき、人が死ぬと平均で21グラム軽くなるんだって。 重いのだろうか、軽いのだろうか。 よく魂を愛しているというのが理想のようにあったりするけれど、 私は器もあってなんぼだと思います。魂も、身体もその人を形作る唯一のものだし。 Who am I going to be for you? |
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