例えば、こんな晴れた日に。 社会の時間に、日本人の平均余命は年々延びてきていて 今や世界の何処よりも最高水準だ、なんて 先生が得意顔で説明した。 (別にこの先生が何をしたわけでもないのに) 平均余命が伸びているって事はつまり僕と君とに 残された一緒に居る時間というものが、例えば五拾年前の それよりもずっとずっと永いと言うことで。 要するに、僕は不謹慎にも何となく君のことを考えたりした。 (社会は比較的得意分野だから支障は無い筈だ) 女性と男性の間には数年の平均余命の差が在るから、 あくまで数字の上の結論でしかないが、もしも一緒に 死にたいならば女の人は、幾らか 年下の恋人を持つ必要があるって訳だ。 (そういえば、姉さんが最近付き合っているらしい 男も彼女より年下だったな、確か) 僕と君は、男と男なんだからそんな事気に病む必要は 無いんだけど、単純に考えて僕のほうが幾らか先に 死ぬ事にはなる。君は、泣いてくれるのだろうか? 僕が死んで、君に残された日々を君が毎日泣いて過ごす のならばとても耐えられない。けれど、忘れても欲しくない。 一体如何すれば良いのだろう? 計算が狂って、何かがあって君のほうが先に死んでしまえば 僕はきっと生きていけない。君が其れを望まないとしても、 きっと生きてはいけないんだ。これは、判りきっている。 だけど、想像すらつかない。 想像したくも無い、君の居ない毎日。 君の居ない、明日。そんな事。 君を遺すのも厭だし、君に遺されるのも厭だ。 其処まで考えて漸くいま自分がどれほど 君に依存しているかに思い当たった。 「先生」 「ん?何だ」 「用事を思い出しましたので、失礼します」 言って、教室の戸をガラリと開けた。 (其の時の先生やクラスメイトの顔ったら!と 後で面白そうに英二が話してくれた) 未だ授業中の廊下は至って静かで時折英語やら、公式やら 色々混じった先生の声が聞こえる。 こんな天気の良い日に君ならばきっとあの場所に居る。 そうだね、こんなに天気の良い日に君に会わずに 一体僕は何をしていたんだろう。 君は、眸を閉じているかな。 それとも、青い空なんかを眺めているのかな。 早く、君に会いたい。 全速力で、息を切らせていつも君のうたた寝するお気に入りの 木の下へ言ったら帽子で顔を覆っていた君がちらりと 此方に目を遣った。 「今、授業中っすよ」 「うん、だって抜け出してきたもの」 「何で」 「とても、難しい問題にぶつかってしまったんだ」 クエスチョンマークを浮かべるような君の怪訝な顔を見て 僕は、先程社会の時間に考えていたことを丁寧に説明する。 「それって、あくまで先の話ぢゃん」 それは、そうなんだけど。 「馬鹿だね、何泣きそうな顔してんのセンパイ」 え。そんな顔してる? 「してる」 弱ったな。 (要するに君がどれほど僕のちっぽけな人生の中で ウエイトを置いているかに気付きました) 「そうだね、俺もアンタを遺すのも厭だし遺されるのも やっぱり厭だ」 「ぢゃあ、如何しようか」 簡単なコトだよ。と少し強い風の中で君が笑った。 とても、とても、綺麗に笑った。 「一緒に、死ねば良い」 君がさらりと口にする大それた言葉に だけど僕は君がそこまで真摯に考えてくれた 僕との恋愛を幸福に思って 目を瞑る。 そうだね。 離れる事を厭うならば、いつか遠い未来に一緒に。 それは、とても素敵な事のように思えた。 君は、いつも僕に素敵な提案ばかり持ちかける天才だ。 「約束だよ」 指に小さな小指が絡む。 「約束っすよ」 きつく、きつく君を抱き寄せる。 夏の近づく碧空がやたらに眩しかったから。 いつか来る最期も成るべくなら、こんな晴れた日に。 *不二センパイが弱いんだか強いんだか。微妙な話ー!! しかも書いたのがかなり前です、これ。アイタタ!! |
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