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天国より野蛮









転寝の午後、まどろみの中君のことを無くす夢を見た。
何てことはない、馬鹿げた幼稚な夢で、君の全てが僕の
掌の中で融けだして、息も切れ切れに目覚めた後
君の口から否定の言葉を聞きたくて、傍らに眠る君を
抱きしめた。

「バカみたい」

君のチェリーピンクの唇から零れた否定に救われた気がして、
そうだよねと言う。そうだよ、と繰り返す君にまた僕も
そうだよねと繰り返す。

「先輩って、頭良いくせにバカだよね」

俺だって、アンタだっていつかは土に還る日が来るのに。
そう言って、少し哀しそうに笑うと君は、羽根のような
白いシーツに全身を包んだ。
朱の走る唇、規則正しく繰り返される呼吸全てが愛しくて、
悲しいのか嬉しいのか込み上げる感情をぐっと堪えて
僕も笑った。
知っているよ、知っている。
此処が楽園でないことくらい、
いつかは僕が君を、君が僕を失うことくらい理解して居るよ。
ねえ、僕は君と出逢うまでこんなにも人を好きになることも
こんなに何かを失うことが怖いということも知らなかった。
君と同じ視線に寝転んで、傍らの窓に張り付いた夏空を
見上げる。天鵞絨の布を一面に広げたような見事な蒼に、
羊雲が泳いで居た。その蒼さが目に染みて、はた、と眸を
閉じても眩しい残像が鮮烈に焼付いて離れなくて、耳を劈く
幾重もの蝉の声に相まり、僕を夏に沈めた。

「俺が、居なくなったら」

耳元で、ぽつり、君が囁く。

「俺が、居なくなったら、シュースケ、死にそう」

「うん、きっと死んでしまうね」

間髪入れず応えると、バカみたい、とだけど嬉しそうに
君が僕の上に身体を寄せる。

「だから、居なくならないでね」

少しだけ日に灼けた、それでも
白い肌に接吻けて君の身体を網羅する脈の所存を確めた後、
至極、至極安堵した。
だって、此処は楽園ではないから。
君と永久に居ることなんて、適わないから。

「俺は、アンタが居なくなっても死なないから。
 アンタのこと、とっとと忘れて誰かと幸せになってやるから」

「そうだね」

「―――――だから、傍に居て。
 俺が、こうして生きている限り」

僕の頭を両の手で固定して、唇に唇が塞がれていく。
上にかかる重みを噛締めながら、君の残像を焼き付けようと
瞼を臥せた。
楽園でない地上、楽園から遠く離れた僕の部屋。








泣きたくなる位、幸福だった。















―――――Wilder than heaven――――――
『微笑った君を抱きしめると 気が触れそうな気持ちになる
 天国よりも野蛮なのに 空の青さに泣きたくなる』

著作権の関係で歌詞全ては載せられないのですが、いつかは書こうと
思って居た曲のタイトルです。思春期―って感じで好き。
不二先輩と王子の恋愛間の違いってこうだと思うのです。マイ設定。
不二先輩は、王子が全てで、その為なら何をも厭わない追詰められ方
が好い。王子は、勿論先輩は好きなんだけど、恋愛で自分を見失う
ことは先ず無いと好い。このアンバランスさがポイントだと思う。
長々語りましたが、人との交際の上で時折どきりと滲む不安を
描きたかったんです。それだけ(笑)


















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