「いいかい?越前。男は狼なんだよ」 まるで俺が聞き分けの無い子どもであるかのように、 先輩は人差し指をぴん、と立てて諭すように言う。 「俺も、狼?」 「越前は、赤頭巾ちゃん。君は未だ幼いし、未熟だし。 ホラ、こんなに可愛いから」 先輩が、急に真摯な眸をしてそれから俺の手を捕らえた。 力任せに押さえつけられて、縺れるように太陽を含んだ ふかふかの彼のベッドの上に雪崩れ込む。 「こんな、風に」 少し長めの髪の毛から覗く双眸は平生あまり見ることの出来ない 種類のものだ。試合中、それも真剣勝負のときだけに先輩が 見せる眸。 先輩は綺麗だ。 色素の薄い髪の毛と眸。柔らかい笑み。 仕草そのものが柔らかく、どちらかといえば中性的で、 所謂男臭さというものを同世代の他の先輩たちと比べたって 殆ど感じさせない。 それに安心していたわけじゃないけれど、甘えていたのは 事実で否めない。 だけど、違うんだ。 俺がもがいても、ちっとも緩まない手。 暴れたって、彼の優位は少しも揺るぐことがなく。 剣呑な光を宿す目は、青年の、一己の男としてのそれだ。 その力の差に、普段気付かされないそんなことに急に何だか 不安になった。心臓が締め付けられるみたいに嫌な音を立てる。 「捕らえられたら、押し倒されたら、為す術なんて無いでしょう」 怖がらせて、御免ね。 少し困ったように先輩は笑って、俺を捕らえた腕を緩めた。 未だ手首に残る指の感触、熱に俺はどんな顔をしていたのだろう。 只、先輩を見つめると、先輩はもう一度御免ね、と呟いて 何時もの空気を纏った。 「隙を見せてはいけないよ。人を信じるなというわけじゃない。 ただ、用心に越したことはないってこと。 だから、君は知恵を、知識を、経験を武器として持つんだ。 狼を狩れる、狩人になるんだよ。 自分の身は、自分で守らないといけない」 曰く、俺は酷く危なっかしいらしい。 先輩の言葉を別に疑うわけじゃないけれど、俺だって 自分の身くらい自分で守れるし、と小さく呟いたのが 聞こえたのかこつん、と頭をぶつけられた。 「また、疑っているでしょう。僕の手すら振りほどけない癖に」 ―――――図星だし、それを言われるとどうしようもないし。 「先輩も、狼?」 一寸不機嫌そうに、訊ねてみる。 何の躊躇も戸惑いも無く、さらりと麗人は笑顔でそうだよ、と言う。 「越前を、食べたいと虎視眈々と狙っている悪い狼さんだよ」 ちっとも悪びれずそんなことを言う自称狼に俺も少し笑った。 「じゃあ、俺は戦う赤頭巾で。 先輩限定で、食べられてあげる」 寝台の上で膝立ちして、先輩に正面から抱きつく。 花の香りのするシャンプー。 少し低めの体温。 先輩。 俺は戦う赤頭巾で、でも、アンタにならばその口から零れる 呟きで、睦言で、美辞麗句で以って傾倒しても好い。 その代わり手加減なんかしないで。 食べるなら残さず食べて。 俺の骨まで、骨の髄まで、きっと真っ赤な中身まで 全て愛して。 自称狼の接吻けに酔い痴れる俺は、不埒な赤頭巾だ。 甘!!甘!!砂糖要らずです。 不二先輩だって男の子だもんね〜。男は皆狼なんですか?(疑問かよ) |
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