「越前の体温って高いよね」 不二の何気なく零した言葉だった。 それは自分が子どもだと言いたいのだろうかとリョーマは疑ったが、 不二は笑って違うよと否定する。 「僕は体温が低いから」 確かに不二の体温は低めなので、不図手を握った瞬間などにひやりと することがある。 「越前の傍ってね安心するんだ。僕はあまり他人の横で眠ったり 出来ないんだけれど。君だけは、例外」 授業中だろうが人前だろうが寝つきが良いことが自慢のリョーマには きっと分からないことだろうなぁとこっそり不二は苦笑する。 人の気配がして安心して眠れたことなんてそうそう無い。 それはチームメイトや今までの恋人でも例外ではなく、只一人 リョーマだけが違っていた。リョーマは日向の馨りがする。 初めて一緒に眠った時は、てっきり昼間太陽の下で運動していた彼の 衣服の匂いなのだと思っていたけれどどうも彼自体が 日向の馨りなのだと漸く思い当たるに至った。 シャンプーとリンス、そして石鹸の決して華美ではないが心地よい、 何処か懐かしい匂いだ。 幼い頃一人でに歩いた畦道や、夕日を思い出すみたいに 懐かしくて嬉しくてそれから何故か切なくなる、そんな馨りだ。 「信頼しているよ、君だけ。誰よりも、ずっとずっと」 だから、傍にいてね? 聞いたときはリップサービスのようなものだと思っていたが、 横で眠る不二の寝息は規則正しく深くて、自分と肌を重ねた後は そういえば何時もストン、と彼が眠りに落ちることに今更気付く。 安心してくれているのだろうか。 (先輩、睫毛長い) (睫毛まで、茶色) (髪の毛も、月光が当たってキラキラしてて) (月みたいな、金色だ) 色素の薄いストレートの栗色の髪の毛も、冷ややかに整った かんばせも、白い肌も、今更なのに綺麗だとリョーマは 思わず見蕩れた。 何て綺麗な先輩。 眠っていてさえも繋がれた手に少しだけ笑って(子どもみたいだ) 不二を起こさないようにそっとそっと手を滑らせて解く。 気付かれてしまえばそれでお終いだ。 布団から這い出て、寝台を抜け出すとこっそりと予めその下に 置いていた鞄から綺麗なラッピングが施された袋を取り出す。 シンプルな銀色の包装紙に、赤いリボンはクリスマスプレゼントとして 包まれたものである。 それを満足げに眺めると、リョーマはまた同じようにこっそりと 布団に入り込み丁度不二の頭の上に位置するようにそれを置いた。 (―――――だって) 俺が欲しいものは先輩が何時もくれるからね。 そうして隣で眠る恋人の額にキスを一つ落とす。 (―――――だって) 俺以外何も信じようとしないアンタのところにはサンタクロースだって 来れやしないから。 (―――――だって) そんなアンタが良いと俺が思っていたりするんだから。 (俺がサンタになってあげる) 先輩は悪い子だけれど、サンタクロースはプレゼントを くれないかも知れないけれど、俺は。 潜り込んだ布団で向かい合うように並ぶと先程解いた指先を 今度は自分から絡めて、もう再び手を繋ぐ。 しっかり、しっかりと。 何処に居ても離れたりしないくらいに。 ジングルベルジングルベル夜空を星が彩って、誰もが頭上に降る 幸福を想っている。 ジングルベルジングルベル目覚めた明日には彼は驚いた顔をして それから少し目を閉じて、笑ってくれるのだ。 照れたように、はにかむように、まるで花が綻ぶみたいに、 それが今この小さい世界で生きている自分にとっての 何よりの幸福だ。 凛と冷え切った夜空から鈴の音が聞こえたような気がして、 指先から等しく馴染む二人の体温にリョーマもそっと眸を閉じた。 リアルタイムでクリスマスイブに小説書いています・・・!! おめでとう!おめでとうリョーマさん!! どうしても不二先輩視点になりがちなイベント物小説をリョーマさんの 視点で書いてみたかったのですが・・・・やたら乙女に。 かなり甘い仕上がりになりましたが、少しでも楽しんで頂けたら。 メリークリスマス!! |
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